信頼は酸素のようなものだ。失われた瞬間に、その不在に気づく。この考えは私のキャリアを通じて心に残り続けてきた。信頼はあるときには目に見えないが、ひとたび消えると、人は意思決定やリーダーシップ、そして互いのことまで疑い始めるからだ。
信頼は組織文化の核心である。信頼があるからこそ、人々は協力し、変化に適応し、不確実な時期にも方向性を見失わずにいられる。文化は「ソフト」なものと見なされがちだが、実際には企業の業績に直結しており、その成功はリーダーシップチーム全体にかかっている。
私にとって勝てる文化とは、人が自分らしくいられると感じられる環境である。主体性と裁量が与えられ、それが組織へのコミットメントと誇りにつながり、組織のパフォーマンスを押し上げる。
信頼を軸とした文化を築く4つの方法
私の経験では、こうした文化を築き、維持することは、いくつかの重要な教訓に集約される。
1. 信頼をリーダーシップの規律とする
信頼を獲得するリーダーシップ行動を考えるとき、採用と人事評価は最も重要な要素の一つである。「トップパフォーマー」を採用するだけでは不十分だ。人事評価や昇進の判断においても、メンバーの行動が組織の価値観と一致しているかを継続的に評価しなければならない。
リーダー層であっても、組織の価値観との明確な不一致があれば、私のチームは難しい決断を迫られてきた。こうした局面は組織全体に重要なシグナルを送る。すなわち、私たちが本当に拠りどころとしているのは価値観だ、ということだ。
採用やリーダーの意思決定に加え、信頼は日々の振る舞いによっても築かれ、あるいは損なわれる。リーダーが言ったとおりに行動しないとき、やり遂げる一貫性がないとき、コミュニケーションが明確さを欠くときに、信頼は崩れていく。だからこそコミュニケーションが重要である。リーダーはすべての答えを持っている必要はないが、背景を示し、「なぜ」を説明し、安定したフィードバックループを保って、方向性が伝わるようにする必要がある。1対1の面談のようなシンプルな行動が、明確さ、予見可能性、そして信頼を生む。
2. 従業員のフィードバックに責任を持つ
従業員は、自分たちの声が本当に聞かれ、行動に移されていることを知りたい。私の組織では、従業員のフィードバックを活用して何が最も重要か、どこを改善すべきかを理解することで、傾聴を優先事項としてきた。定期的なエンゲージメント調査やパルスサーベイがリアルタイムの洞察を提供し、特に成長や変化の時期において、メンバーと密接につながり続ける助けとなっている。
このアプローチが機能しているのは、マネジャーとの関係性がより強固になっていることに表れている。ギャラップによれば、「職場で尊重されていると強く同意する従業員の割合」は過去最低の37%に戻ったという。一方で、当社の社内データでは、90%超のメンバーが「尊重されている」と回答している。この差は、一貫して意味のある形で耳を傾け続けることの効果を示している。
傾聴は、目に見える行動へとつながるときに最も効果を発揮する。私がこの銀行に来て間もない頃、あるメンバーが慶弔休暇制度についてフィードバックを寄せてくれた。私たちは重要な更新を迅速に実施し、従業員の声に対して「最後まで応答する」姿勢をあらためて示した。こうした経験は、リーダーが積極的に耳を傾け、応じ、フィードバックが意味のある変化を生むとき、信頼が築かれ、エンゲージメントが強まることを示している。
3. 成長と変化の中で文化を守る
企業が規模を拡大したり、変化を経験したりすると、特にM&Aの結果として、長い時間をかけて築いてきた文化が突然危機にさらされる。しかし、意図的な取り組みと一貫したリーダーシップがあれば、成長や不確実性の中でも強い文化を維持することは可能だ。
アトランティック・ユニオン・バンクは4年連続で、全国と地域の両方で「働きがいのある職場」に選ばれている。私の経験上、こうした評価は、単一の施策、1人のリーダー、あるいは1つの部門だけで得られるものでは決してない。強い文化は、透明性、説明責任、そして時間をかけて信頼を強化するリーダーの行動によって、共同で築かれる。
そのような文化は偶然には生まれない。『ハーバード・ビジネス・レビュー』の調査によれば、情報が隠されていると従業員が感じたり、リーダーが決定を覆したりすると、従業員がリーダーを信頼する可能性は20%低下する(要登録)。また、最近のForbesの記事(要購読)は、2026年に必要なリーダーシップスキルのトップとして誠実さを挙げている。これはつまり、言ったとおりに実行すること、正直であり、本物であることだ。簡単だろうか。必ずしもそうではない。リーダーは責任を持ち続け、正しいことを行い、たとえ困難でもそれを貫かなければならない。ビジネスには未知が多いが、自身のリーダーシップスタイルと自分の言葉だけは、不確かなものにしてはならない。
4. 価値観を体現する行動を認め、報いる
新入社員に向けて文化を形づくる先頭に立つのはリーダーかもしれないが、マネジャーや従業員も大きな役割を担っている。鍵は、会社の価値観を生き、体現している従業員を見出し、その人たちを後押しすることだ。称賛は大きな力になる。
当社で従業員を称える方法の1つが「シャウトアウト」プログラムで、メンバーが意義ある行動に対して「称賛を送る」ことができ、マネジャーにはその称賛が通知される。自分が見られ、価値を認められていると感じる従業員は、リーダーとともに文化を共創し、維持していく可能性が高い。
これからの時代、勝てる文化とは何か
働き方の未来は、近年の劇的な変化と同様に、今後も変わり続ける。テクノロジーとAIの進展のスピードは、リーダーにさらなる問いを突きつけ、働く人々にはリスキリングとアップスキリングを続けることを促すだろう。つまり、職場文化は不確実性の高まりと、今後訪れる不安定さの中でリスクにさらされる。
繁栄し、勝ち残る文化は、リーダーがすべての答えを持っている職場ではない。正直さ、説明責任、本物らしさ、誠実さの文化をリーダーが自ら示してきた職場である。
そしてAIが中心であり続け、企業の投資が増えるほど、人間的な側面を決して見失わないことが重要になる。人間として本物であることは、パフォーマンスと切り離されたものではない。むしろ、事業戦略に、そして「傾聴戦略」にも組み込まれるべきだ。
勝てる職場文化は、テクノロジーを活用し価値観に根ざした組織の中で、人間性と心を重んじることで築かれる。そしてそれこそが、これから先も常に勝ち続ける。



