10年前、世界の人々は、英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めるところをつぶさに見た。
政治家たちは慌てふためき、テレビのコメンテーターたちはクリスマスまでに破滅が訪れるなどと不吉な予言を口々にしていた。そんななか、筆者は読者に少し違う忠告をした。エスタブリッシュメントがパニックに陥っているとき、本物の投資家は金(ゴールド)に目を向けるものである、と。
2016年の国民投票以来、金の価格は3倍になった。今年は一時1トロイオンス5000ドルの大台を突破し、その後は一服して4000ドル近辺で推移している。
この間、わたしたちは、一生に一度あるかないかのパンデミック(感染症の世界的な大流行)、2回のエネルギー危機、欧州での地上戦、貿易戦争を経験した。これらのさなか、各国政府が動揺する一方で、金は冷静さを保ち続けた。
ブレグジットの決定から10周年にあたり、ここで4つの教訓を読者と共有したい。といっても、どれも英国自体とはほとんど関係なく、むしろ読者の資産防衛方法にかかわるものである。
#1 不確実性は「恐怖トレード」の最大の追い風
10年前の時点では、まさかウイルスによって世界中が閉鎖される事態が起こるとは筆者も予測できなかった。ロシアが欧州のエネルギー市場を危機的な状況に陥らせることもそうだし、英国でこれほどころころと首相が交代する結果になることも。おそらく誰にも予測できなかっただろう。
もっとも、筆者としては、こうした個別の出来事については予測する必要もなかった。ただたんに、世界が恒常的な不確実性の時代に入ったということ、そして、投資家がそれを乗り切っていくには金が役に立つということ、それがわかれば十分だった。
筆者はかねてそうした取引を「恐怖トレード」と呼んできた。世界各国・地域の中央銀行が金地金の保有を積み増し続けているのもそのひとつだし、読者にいつも推奨しているように資産の10%を金(金現物と金鉱株に5%ずつ)に配分することもそうだ。
退屈な取引だろうか? そうかもしれない。しかし、その退屈な取引の対象である資産は10年間で3倍に値上がりし、英国株や欧州株をアウトパフォームしているのだ。



