いま、米国中の役員会議室で交わされている議論がある。しかし、その枠組み自体が完全に誤っている。リーダーたちは、多文化マーケティングを優先事項とすべきか、それとも現在の政治環境を踏まえて沈黙を守るべきかを議論しているのだ。
この局面をうまく乗り切るブランドは、政治的声明を出すブランドではない。行動とコミュニケーションを通じて、真摯で持続的な文化理解を示すブランドである。
私は十分な数のCEOやCMOと向き合ってきたから、こうした会話がどのように進むかを知っている。戦略は会議室では喝采を浴びるが、SNSでの反発への恐れや、消費者の変化を受け入れようとしない姿勢によって、いつの間にか優先度が下げられる。私が最もよく耳にする言い訳は予算削減だ。優先順位のリストから真っ先に外されるのが多文化向けのアプローチであり、それは往々にして財務的に無責任な判断である。
マイノリティがマジョリティになる時代
多くの経営幹部が直視したがらない現実がある。白人消費者は、集団として縮小している。米国国勢調査のデータによれば、非ヒスパニック系白人は2045年までに米国総人口の50%を下回る。
一方で2022年から2023年にかけて、ヒスパニックは米国総人口増の約71%を占めた。その主因は移民ではなく出生である。米国のヒスパニックの大半は米国市民であり、67%は米国生まれだ。Latino Donor Collaborativeは、2030年までにラティーノが米国の労働力の22.4%を占めると予測している。
ブランドにとっての問いはシンプルだ。減少している人口をターゲットにマーケティングを続けるなら、どのように成長するのか。多文化消費者、特に米国のヒスパニックを無視することは、中立的なビジネス判断ではない。財務的に無責任な判断である。
多文化オーディエンスはもはやニッチではない
ある消費者セグメントが、人口に加わる新しい米国人のほぼ10人に7人を占めるなら、それはもはやニッチなオーディエンスではない。成長市場である。
いま自社ブランドがヒスパニック消費者と意味のある形でつながれていないなら、現状維持ではない。つながれている競合に対して、地歩を失っているのだ。
信頼が鍵となる市場への参入が遅れれば、コストは高くつく。いったん競合に与えられたロイヤルティは、簡単には移らない。英語の広告をスペイン語に吹き替えただけでは多文化戦略ではない。ストック写真を差し替えただけでは文化的妥当性にはならない。年間を通じた関与計画のないワールドカップのスポンサーシップは関係構築ではない──取引にすぎず、多くのヒスパニック消費者はそれを即座に見抜く。
文化的な節目のときだけ顔を出し、あとは一年の残りを通して姿を消すブランドは信頼を得ない。得るのは懐疑である。
いま問うべき3つの質問
自社ブランドを本物で、信頼でき、適切な存在にしたいなら、いまこの3つを問うべきだ。
1. 現在の戦略は市場を正確に反映しているか
多くのブランド計画は、過去の消費者データに基づいて構築されており、そのデータは市場をますます誤って表すようになっている。多くのブランドは、ヒスパニックを狙うために行動セグメンテーションを用いる。文化が意思決定のあり方を根本的に変えない場合には、これは非常に有効だ。しかし米国のヒスパニックでは、文化が意思決定に影響を及ぼす。
NielsenIQのデータによれば、ヒスパニック消費者は、ブランドへの信頼、家族の影響、文化的アイデンティティによって動かされる傾向がある。これは行動クラスターには決して表れない。そうしたシグナルを「共通点」へと平板化してしまうと、届くが刺さらないメッセージになる。行動のトリガーと文化的なドライバーは同じではない。
2. 文化理解に投資しているのか、それとも文化的プレゼンスだけなのか
ヒスパニック消費者に「見える」ことと、彼らに「信頼される」ことの間には大きな違いがある。可視性はメディア購入で得られる。信頼は、彼らの価値観、家庭内の力学、世代ごとのニュアンス、そして生活実感を理解していることを、一貫して示すことで得られる。前者は予算を要する。後者は真のコミットメントを要する。影響を生み、選ばれるブランドになるためには、その両方が必要である。
3. 多文化戦略は経営のテーブルにあるのか、それとも下へ委ねられているのか
私の経験では、多文化戦略を正しく進めるブランドは、CEOとCMOがそれを中核的な経営優先事項として扱うブランドである。若手チームや、限定的なブリーフしか持たない代理店に丸投げするものではない。
多文化マーケティングの経験がないメンバーと仕事をしてきたことは何度もある。こうした状況では、プロジェクトが遅れがちになり、投資が疑問視され、クリエイティブがすでに開発された後で戦略が放棄されることさえある。時間と資金の両方を無駄にすることになる。
ブランドが最も頻繁に誤るのは構造上の問題だ。多文化マーケティングが、マーケティングの推進力ではなく、その一部として扱われている。
この好機が永遠に開いているわけではない。四半期ごとに遅れれば、四半期ごとに不利が複利で積み上がる。米国で最も急成長する消費者勢力はニッチではない。次の10年の成長である──そう見ることを選ぶなら。



