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リーダーシップ

2026.07.06 15:45

従業員が「辞めない」のは満足しているからではない

stock.adobe.com

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2026年の年初時点で、「大転職」が起きるという見立ては、より明確になりつつあった。エンゲージメントは低下し、不満は高まり、従業員は組織とのつながりを失い始めていた。データは、適切な機会さえ現れれば離職の波が起きることを示していた。

その瞬間はまだ到来していない。しかし、その予測を生んだ条件が消えたわけでもない。むしろ、直近の労働力に関するデータは、状況が悪化していることを示唆している。

労働統計局(BLS)の2026年3月JOLTSによれば、離職率は2%で、過去10年で最も低い水準に近い。多くのリーダーにとって、これは朗報に映る。自発的に辞める人が減り、離職は横ばいで推移しているからだ。

同時に、ギャラップの2026年職場調査では、従業員エンゲージメントが31%まで低下し、11年で最低水準となった。長期的な組織へのコミットメントも9年ぶりの低水準に落ち込んだ。

この2つの数値が逆方向に動いている以上、両方が良いニュースであるはずがない。よりあり得る説明は、多くの組織が予想していた離職の波が消えたのではなく、先送りされたということだ。従業員が踏みとどまっているのは、組織と結びついているからではなく、辞めることがより危険で、よりコスト高になったからである。

危険なのは、今日の離職率そのものではない。低い離職率を健全な職場の証拠だと誤認することが危険なのだ。いま多くの組織で、従業員は「いたいから」ではなく、「いざるを得ないから」残っている。

リテンション指標と現場の実態の乖離が拡大している

自発的離職率2%は依然として過去10年で最低水準に近く、多くの組織はそれを定着施策が機能している証拠と解釈している。しかし、低い離職率と、コミットメントの高い労働力は同義ではない。

ギャラップは、職場でエンゲージしている従業員が31%にとどまると報告している。これは11年で最低水準であり、10人中7人近くが、自分の仕事や職場に十分に力を注げないまま出社していることを意味する。

世界全体で見ても、エンゲージしている従業員は20%にすぎない。残りの80%は、ただ惰性で仕事をこなすか、積極的に関与をやめている。こうした状況は離職率には現れないが、彼らは依然として給与支払い対象である。

これが、「静かな退職」が大規模に起きている姿だ。精神的には職場を離れているが、出社は続け、求められる最低限のことしかしない従業員である。彼らは静かに計算している。いま辞めるリスクは割に合わない。しかし、残ることはコミットメントを意味しない。

この離職しない形の離脱がもたらすコストは、測定可能である。失われた生産性は、推定で年間10兆ドルに達し、前年の8兆9000億ドルから増加した。組織は、身体的にはそこにいるが心理的には別の場所にいる労働力を抱えている。それでも多くのリーダーは、注視している指標が離職率であるために、実際にどれほどのコストがかかっているのかを把握できていない。

大半の従業員が「不満を抱えながら残る」3つの理由

リーダーが壊れたものを直す前に、まず理解すべきは、実際に何が従業員を職場につなぎ留めているのかという点である。それは忠誠心ではない。満足でもない。使命への信念でもない。従業員が残っているのは、辞めることが危険に感じられ、そしていま、そのリスクが多くの人にとって高すぎるからだ。

1. 採用市場が停滞している

求人件数は2025年末時点で650万件となり、2020年のコロナ禍による急落を除けば、8年以上で最低水準だった。雇用主が2025年に増やした雇用は58万4000件にとどまり、パンデミックを除けば2009年以来最悪の年となった。2024年の200万件と比べても大きく落ち込んでいる。

「大量退職」を支えた労働市場は、もはや存在しない。代わりに現れたのは、採用も解雇も少ない環境であり、従業員が自らの意思で残っているわけではない。行き先がないから留まっているのである。

2. 金銭的圧力で転職が割に合わない

仕事を辞めることは、リスクを引き受けることでもある。いま多くの労働者にとって、そのリスクは金銭面にある。Resume Nowの2026年「生活費逼迫レポート」では、賃金がインフレに追いついていると答えた人は12%にすぎず、必需品を賄いながら貯蓄できるだけの経済的安心があると感じている人も17%にとどまった。

これほど綱渡りの状況にいる労働力にとって、仕事の空白期間は不便ではない。それは財政的な緊急事態である。消耗させられる仕事に留まることが、破滅的な結果を避けられる唯一の選択肢に感じられてしまう。

3. 求職プロセスが意欲を奪うものになっている

辞めることを検討する従業員にとっても、転職活動そのものが罰のようになっている。ある調査では、求職者の72%が、求職活動がメンタルヘルスに悪影響を与えたと回答した。

候補者は、長い面接プロセスに時間と労力を投じた後で、音信不通にされる。実体のない「ゴースト求人」が見かけ上の機会を膨らませ、結局は何も生まない。市場は、辞めようとする人に明確なシグナルを送っている。思った以上に時間がかかり、想定以上にコストがかかり、応募した企業の大半は返事すらしないだろう、と。

すでに金銭面でも感情面でも余裕のない従業員にとって、その計算は、離れたかった机へと引き戻す力になる。

市場が再び開くときに起きること

いま踏みとどまっている従業員は、辞められる条件がまだ整っていないから残っている。採用が増え、求人が拡大すれば、溜まっていた離職はじわじわと流出するのではなく、急増する。

これこそ、多くの組織が備えていない引き金リスクである。リテンションの成功事例に見えた従業員が、辞めることが金銭的に可能で、実務的にも現実的になった瞬間、離職危機へと変わる。低い離職率を忠誠心だと読み違え続けた組織は、確保できていると思っていた人材の補充に奔走することになる。

ギャラップの調査によれば、離職の42%は防ぐことができる。誰かがすでに辞めると決めた後ではなく、人を押し出す条件が固まる前に、である。手を打つべきタイミングは市場が転じるときではない。いま、従業員がまだ席にいるうちに、そして離職が起きていないうちに、である。

リーダーが従業員体験を改善する方法

従業員が選択肢の少なさから残っているのだとすれば、組織は低い離職率を「すべてがうまくいっている」サインとして扱う誘惑に抗うべきである。目標は、どんな犠牲を払ってでも従業員を引き留めることではない。従業員が自ら残ることを選ぶ環境をつくることだ。

1. まず管理職から始める

管理職は、チームレベルのエンゲージメントの変動の70%を説明する。チームを率いる人々が自分の仕事にコミットしていなければ、ウェルネスプログラムも報酬調整も企業文化施策も効果は限定的である。ところが管理職のエンゲージメントは、2024年の27%から2025年の22%へと、1年で5ポイント低下した。従業員のつながりを保つ責任が最も大きい層が、組織内で最も切り離されつつある。

エンゲージメント施策を始める前に、リーダーは、管理職が部下に向き合うために必要な支援、役割の明確さ、業務負荷のバランスを得られているかを評価すべきである。

2. 柔軟性を本気で捉える

Natureに掲載されたスタンフォード大学の研究は、ハイブリッドワークが、パフォーマンスへの測定可能な影響を与えることなく、離職率を33%低下させたことを示した。働き方や働く場所をある程度コントロールできる従業員は、市場が開いたときに辞めにくい。根本的なエンゲージメント不足に手を付けないまま柔軟性を後退させる組織は、すでに脆い状況をさらに悪化させている。

3. 継続的かつ意味のある承認を行う

承認は、活用されていないリテンション施策のひとつである。適切に承認されている従業員は、2年後に離職している可能性が45%低い。それにもかかわらず、仕事に対して適切な量の承認を得ていると答えた従業員は22%にとどまり、この数値は2022年以降改善していない。

従業員が必要とする承認と、実際に受け取っている承認のギャップは、多くの組織が見過ごせないリテンションリスクである。管理職は、日々の貢献に気づき、言葉にし、感謝を伝えることを一貫して行うべきだ。

4. リテンションだけでなく、コミットメントを測る

離職率2%が示すのは、何人が辞めたかだけである。何人が辞めようとしているかは何も語らない。離職だけを追う組織は、過去を測っているにすぎない。より有用な問いは、市場が機会を与えたなら、明日辞める従業員がどれほどいるか、である。パルスサーベイ、管理職の定期的なチェックイン、そして「残りたい意思」ではなく内発的動機を測るエンゲージメント追跡は、労働力が実際にどこに立っているのかを、より正直に映し出す。

5. 育成と成長機会に投資する

組織内に成長の道筋が見える従業員は、外にそれを求める理由が小さくなる。学習文化が強い企業は、そうでない企業の27%に対し、57%の従業員定着率を示す。同じ会社の中で新しい役割に移る従業員は、現在の職務に留まる従業員よりも、エンゲージしている可能性が3.5倍高い。そして労働者の80%は、新しいスキルを学ぶ機会があればエンゲージメントが高まると答えている。

従業員にとって、育成は「組織が自分の将来を見ており、そこに投資する意思がある」というシグナルである。成長していると感じれば人は残る。行き詰まりを感じれば、人は探し始める。

低い離職率は勝利ではなく警告である。従業員が残っているのは、満足しているからでも、コミットしているからでも、組織とつながっているからでもない。労働市場が、まだ現実的な出口を与えていないからにすぎない。離職率が示しているように見えるものではなく、データが実際に語っていることに基づいて行動するリーダーこそが、市場が再び開いたときに人材を守り抜く。

forbes.com 原文

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