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経営・戦略

2026.07.15 13:30

「放送」だけでは届かないメディアがつくる次の「体験価値」

オンラインで知り、リアルで体験する。テレビ番組とリアルイベントの関係から、メディアの新しい役割を考える。マクアケ創業者による連載第65回。


最近、リアルイベントのもつ力を感じる機会があった。5月に東京ビッグサイトで開催された大型アウトドア展示会「FIELDSTYLE TOKYO 2026」に、Makuakeとして出展したときだ。愛知で生まれ、アウトドア好きには名物イベントとして知られる「FIELDSTYLE」の東京初開催である。

会場にはキャンプギア、モビリティ、クラフト、フードなど、「遊び」と「暮らし」を楽しむ多様なブランドが並んでいた。Makuakeのブースでは、現在展開中のプロジェクトや、そこから生まれたアウトドア・ガジェット関連の商品を展示し、来場者に直接体験してもらった。我々にとっても画面越しで伝わる魅力とは違う、実物を持ったときの重さや質感、使い勝手、そしてつくり手との会話から生まれる納得感は特別なものがある。オンラインだけでは届けにくい情報が、リアルの場では一瞬で伝わっていくことを感じた。

この「FIELDSTYLE」というイベントそのものの成長も興味深い。2017年に誕生してから来場者数を拡大し、21年には法人化。その後、地元愛知県のテレビ局である名古屋テレビ(通称メ〜テレ)が株式を取得し、グループ会社化した。メ〜テレはもともと、アウトドア系の人気情報バラエティ番組「ハピキャン」を放送している局でもある。

テレビ局がリアルイベントを仕掛けること自体は、決して珍しい話ではない。シルク・ドゥ・ソレイユの日本公演をフジテレビが長年手がけてきたように、マスメディアの認知力とリアルな場を結びつける取り組みは以前から存在していた。しかし、今回面白いと感じたのは、テレビを単なる集客装置として使うのではなく、アウトドアというひとつのカテゴリーにおいて、番組を起点にリアルイベントやコミュニティ、購買体験などが垂直統合され始めている点である。

今、流通やマーケティングの世界では、O2O(オンラインとオフラインをつなぐ施策)の次を模索している企業が多いと感じる。オンラインで知り、店舗で触り、SNSで共有し、オンラインで購入する。生活者は、ただ「オフラインで見てオンラインで買う」、「オンラインで見てオフラインで買う」という単純な体験を求めてはいない。大事なのは、そのブランドやコンテンツと出合う一連の体験が、どれだけ自然で、楽しく、記憶に残るかである。

総合プロデュース力が試される時代

以前このコラムでも、ニコニコ動画とニコニコ超会議の関係について書いたことがある。オンライン上の熱量をリアルの場で最大化し、リアルで生まれた熱狂をまたオンラインへ戻していく。一気通貫したプロデュースがあるからこそ、双方が単独で存在するよりも大きな体験になっていた。「ハピキャン」と「FIELDSTYLE」の関係には、これに近い構造がある。ただし起点はオンラインメディアではなく、マスメディアである。テレビ番組では伝えきれない道具の手触りや会場の空気をリアルイベントで提供し、リアルイベントだけでは届きにくい物語や楽しみ方を番組が継続的に伝えていく。会場では、アウトドア好きの方々が純粋にイベントを楽しみ、出展企業も来場者とのコミュニケーションを楽しんでいた。Makuakeのブースにも「ハピキャン」の出演者がプライベートで訪れてくれるなど、メディアで見ていた世界と、リアルな購買体験や偶然の出会いが自然につながっていた。

オフラインかオンラインか、マスメディアかデジタルかという言葉だけで語る時代は、すでに終わりつつある。これから重要になるのは、各チャネルを統合し、生活者の心が動く体験として設計する総合プロデュース力である。その次の時代の入り口を見た気がした。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズ(現グロース)に上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

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