次に来るのはシステミックリスク(1社の破綻が連鎖し、システム全体を揺るがすリスク)だ。オラクルはOpenAIに計算資源を供給する3000億ドル(約48.6兆円)の契約を結んだが、直近の年次報告書では、顧客(OpenAI)の支払い不履行や契約の非更新というリスクを自ら明示した。ジトロンの分析によれば、オラクルはOpenAIという単一の巨大テナントのために、およそ7.1ギガワット分のスターゲート(Stargate)設備を建設している。その建設費をジトロンは3400億ドル(約55.08兆円)近くと見積もるが、これはOpenAIが事業からまだ生み出せていない金額だ。実際、2025年1月にホワイトハウスで発表された旗艦事業スターゲートは、1年余りが経ってもスタッフを1人も雇わず、資金調達をめぐって行き詰まっていた。
こうした資本集約の波は、今や最も強固なバランスシートを持つ企業にまで及んでいる。アルファベットは6月、AI設備の建設資金を賄うため、株式売却によって800億ドル(約12.96兆円)の調達に乗り出した。直近で数百億ドル(数兆円)規模の社債を発行したうえでの動きだ。ウォール街の推計では、ハイパースケーラー(超大規模データセンター事業者)の設備投資は合計で今年7000億ドル(約113.4兆円)を超える見込みだという。最も収益力のあるハイパースケーラーですら、競争についていくために株式と負債の両方に手を伸ばしている。そうなると、AIの設備投資がキャッシュフローを上回っているという主張は、もはや簡単には振り払えない。
もっとも、強気派にも確かな反論はある。Anthropicは、年間売上ランレート(現時点の売上を年換算した指標)が470億ドル(約7.61兆円)近くに達し、2026年第2四半期に営業黒字を計上したと報告した。ただしジトロンは、その黒字の達成手法を「作られたものだ」と評している。エヌビディアは1つの四半期だけで816億ドル(約13.22兆円)を売り上げ、計算層が本物のキャッシュを生み出していることを証明した。OpenAIの費用比率も前年から改善した。だが、そのいずれも、批判者たちが繰り返し問いかけている論点に決着をつけるものではない。すなわち、モデル層は持続的なビジネスなのか。それとも、OpenAIとAnthropicがトークン価格の値下げ競争へ向かう中で、補助金頼みのコモディティ(差別化の難しい汎用品)と化していくのか、という問いである。
これがVC(ベンチャーキャピタル)の間で話題になっているのは、批判の主が誰なのかという点に、意味のある変化が起きているからだ。
空売り筋の言うことなら、容易に一蹴できる。だが、オペレーター、監査人、そして企業自身のリスク開示となれば、話ははるかに深刻だ。当面の試金石はOpenAIのIPOである。これまで損失は語り口でうまく覆い隠せたが、IPOではそうはいかない。監査済みの数字が語りに取って代わり、市場はその損失に、正面から価格をつけることになる。これまでのように、旧来の独占事業(グーグルなどが持つ既存の稼ぎ頭)の陰に損失を隠すことは、もはやできない。最先端APIの上でサービスを築く創業者にとって、カープの警告は具体的な指示として読める。自社の優位が他社の学習データセットになってしまう前に、自社のデータ、重み(ウェイト)、そしてアルファを自らの手で握れ、という指示だ。この主張が崩れるのに、バブルが弾ける必要はない。証拠を握った信頼できる人々が、十分な数、現れ続けさえすればよいのだ。


