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2015.11.10

WiFi特化型スマホ「フリーダムポップ」の衝撃

Ken Wolter / Shutterstock



半導体事業が不振のインテルが新たな戦略に打って出た。同社は通信ベンチャーのフリーダムポップと共同で、WiFiを優先的に利用するスマートフォンを開発。無料のセルラー通信込みで提供する。フリーダムポップは仮想事業体通信事業者(MVNO)として米大手キャリアSprintの無線帯域を利用してサービスを提供している。

2社が開発するスマホは2016年に発売される予定で、インテルのモバイル用チップセットSoFIAを搭載し、電話中でもWiFiとセルラー方式をシームレスに切り替えることができる。ホットスポット急増の潮流に乗ったサービスであり、フリーダムポップ自身も全米で880万か所のホットスポットを整備している。

フリーダムポップの創設者でCEOのスティーブン・ストコルスは「通信キャリアはLTEネットワークを構築するために数十億ドルを費やしているが、モバイル端末でのダウンロードの90%がWiFi経由で、セルラーネットワーク経由のダウンロードは10%に過ぎない」と言う。

「結局のところ消費者は、LTE接続が必要な10%のトラフィックのために、通信キャリアに50~120ドル払っているのだ」

3G版は来年、イギリスで先行発売され、その後アメリカで4G版が発売される。ストコルスCEOによると、新しいスマホは同社の主力商品になる見込みで、販売は同社が全て担当する。

インテルとフリーダムポップの計画は、グーグルの「Project Fi」に似ている。これはグーグルが自社開発したNexus 6でMVNOサービスを提供するもので、月々20ドルで国内通話とテキストメッセージが無制限、データ通信料は1ギガあたり10ドルだ。

今回の取り組みで、インテルの投資部門はフリーダムポップに対し数百万ドル規模の出資を行っている。フリーダムポップは7月にシリーズBラウンドで3,600万ドル(約44億円)の資金調達も実施している。

インテルはここ数年、モバイル業界での地位を上げようと資金を投入してきたが、年間数十億ドルを無駄にしてきた。同社のモバイル部門は2014年に42.1億ドル(約5200億円)の営業損失を出した(モバイル部門は現在、PC部門と統合されモバイル事業だけの業績報告が行われなくなったため、正確な損失は分からなくなった)。

フリーダムポップのストコルスCEOは「インテルはモバイル市場におけるポジションを変えたいと切望している。弊社にとって素晴らしいパートナーだ」と語る。

「インテルは新たな試みに積極的で、通信キャリアの支配に対し、果敢に挑戦しようとしている」

文=アーロン・ティリー(Forbes)/翻訳編集=上田裕資

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