アサレの活動を支援した「Creatives for Our Future」プログラムを運営するスワロフスキー財団は、ハイブマインドによってノートPCの寿命を最大3年延ばせる可能性があると見込んでいる。ただし、これはプロジェクト側による試算であり、第三者によって検証された結果ではない。本当の評価は、より多くの製品がユーザーの手に渡ってから下されることになる。ハイブマインドが単に周辺機器を1つ増やすだけで終わるのか、それとも消費者の購買行動を変える存在となるのかは今後明らかになる。
アサレによれば、プロトタイプは既に設計図や初期デザインの段階を脱しているという。次なる目標は、実際に稼働するユニットをユーザーに提供し、検証データを蓄積するとともに、継続的に生産できる体制を構築することだ。彼は、今後1年以内に約100台を実際のユーザーに利用してもらうことを目指している。しかし、技術面の課題に加え、資金面も大きな壁となっている。「資金調達は容易ではない」とアサレは語る。彼は、実際に動く製品をユーザーの手に届けることで投資を呼び込み量産につなげたいと考えている。
既存技術を進化させる
外付けGPUボックス(eGPU)そのものは、新しい技術ではない。すでにソネット・テクノロジーズ(Sonnet Technologies)やレイザー(Razer)などが、対応するノートPCでデスクトップ用グラフィックスカードを利用できる製品を販売している。
例えば、ソネットの「Breakaway Box 850 T5」はThunderbolt 5搭載Windows PCのほか、一部のThunderbolt 4やUSB4対応Windows PCに対応している(編注:USB4対応Windows PCの場合は、Thunderbolt 5対応製品を接続し適切に動作するか事前の調査が必要な場合がある)。レイザーの「Core X V2」も同様のコンセプトを採用している。いずれの製品も、外付けデバイスによってノートPCのグラフィックス性能を大幅に向上させることを可能にしている。つまり、ハイブマインドはeGPUという新たなカテゴリーを創出しようとしているのではない。既存のeGPUをより価値の高いものへと進化させることに同社の勝機がある。
アサレは、外付けGPUボックスが一般消費者向けのアップグレード手段として普及する上で障壁となってきた課題の解消に取り組んでいる。従来の製品は大型で高価な上、導入のハードルも高かった。ユーザーは(外付けGPUボックス[eGPU]に内蔵するための)対応グラフィックスカードを選び、十分な容量の電源を用意し(編注:グラフィックスカードによっては大容量の電源が必要)、さらにノートPCやOS、デバイスドライバーがその構成に対応しているかどうかまで確認しなければならなかった。
ハイブマインドの成否は、こうしたハードルをどこまで下げられるかにかかっている。よりコンパクトで使いやすく、価格面でも手の届きやすい製品にできるかどうかが問われる。また、その価値は「サステナブル」をどう捉えるかによっても評価が分かれるだろう。
外付けGPUボックスにも原材料や製造工程、電力が必要であり、いずれは廃棄・リサイクルの対象となる。たとえノートPC本体を使い続けても、ユーザーがグラフィックスカードを頻繁に交換すれば、その分だけ新たな廃棄物が生まれる可能性がある。つまり、この製品の環境面での価値は、延命されたノートPCの台数だけでは測れない。重要なのは、システム全体として、新たな生産や廃棄を増やす以上に、それらを削減できているかどうかである。


