トランプが史上最高と誇ったUSMCA、今や変更を求める
2020年1月29日の署名式典でトランプはこう述べた。「USMCAは、これまでに実現した最大で、最も公正で、最も均衡が取れ、現代的な貿易協定だ。これに匹敵するものはない。現在他国もこれに注目しているが、あのような国境はあり得ない。信じるかどうかは別として、経済の面でも、人の面でも、世界で断然最大の国境だからだ」。
史上最高のディール。「農家、牧畜業者、エネルギー労働者、工場労働者、そして全50州の米国労働者にとっての大勝利」だという。
現在、米国は変更を求めている。6年が経過したのだから、それ自体は妥当だろう。物事も、人々が望むことも、ときに変わる。全員がそれを認識し、誠意を持って交渉すれば、予測可能な形で変更を加えることは可能である。
予測不能を武器とする交渉が10年の不確実性を生む
しかし、トランプは数十年にわたり、予測不能性を信条としてきた。突然の方針転換で交渉相手の足元を揺るがす。それは1つのスタイルではあるが、すべての権力を握っている者にしか通用しない限定的な手法である。
地政学においては、たとえ交渉当事者の一方が絶大な力を持っていたとしても、そうはいかない。
16年計画の突然の破棄は、今後10年間、毎年すべてが交渉の対象となり得ることを意味する。その交渉プロセスには何カ月もかかる可能性がある。予測不能な関税戦略を取り、それが米国に与える影響を増幅させるようなものだ。
消費者、企業、政府、国際関係、世界貿易──あらゆるものに影響が及ぶ。2025年の関税をめぐる不確実性よりも、はるかに深刻な事態になりかねない。そして今、すべてのピースを元に戻す簡単で確実な方法は存在しない。


