誰かが水に落ちるのを見たとき、あなたは水温を確かめるだろうか。流れはどうか。自分の泳力は十分か。あるいは、本能に従って飛び込むだろうか。どこかの時点で、状況そのものが決断を迫ってくる。
ビジネスは通常そこまで劇的ではないが、構造はそれほど違わない。
意思決定をするとき、私のプロセスは「視点は不完全である」という前提から始まる。私の考えでは、視点が多いほどよい。
しかし現実には、視点を集め続けるための時間やリソースは無限ではない。ある時点で、その決断を担うリーダーが、理想的ではなくとも決めなければならない。多くの場面で、完璧でない決断を下すほうが、まったく決めないよりもましである。
中立を保つことは、コストになり得る。ビジネスにおいて中立とは、状況が何か1つへの集中を求めているにもかかわらず、競合する2つの方向性を同じ比重で保とうとすることになりがちだ。中立は、バランスを装った優柔不断になり得る。そして、事業の目的が明確でなければ、事業も意思決定も減速する。
まずはオーナーシップを明確にする
何よりもまず、オーナーシップを確立しなければならない。
あなたがその意思決定のオーナーなら、決める必要がある。言うまでもないように聞こえるが、組織は常にそう動くとは限らない。最終的には1人のリーダー、あるいは1つのチームに属するはずの意思決定プロセスに、あまりに多くの人が入り込み、結果として方向性が失われることがある。関与する人は多いのに、実際に判断を下す人がいないのだ。
オーナーシップが明確になったら、さらに視点を集めることが、いつ「役に立つ」から「事業を遅らせる」に変わるのかを考える。
おそらく、時間、人員、資本、市場環境、そして自分がコントロールできる実務的リソースなど、いくつかの制約に直面しているはずだ。それらの制約は、リソースも時間も無限ではない以上、意思決定を前に進める力になる。どこかで、決めるしかない。
真のリーダーシップ上の課題は、ためらい続けることがもはや慎重さではなく、単に事業にコストを生んでいるだけだと見極めることである。
快適さではなくリスクプロファイルで判断する
リーダーは心地よい決断を待ちがちだが、時計の針が進んでいるなら、心地よさはたいていすでに失われている。より適切な検討は、先延ばしが行動よりも大きなリスクになっていないかどうかである。
だからといって、速い決断が常に良い決断というわけではない。泳げないのなら、飛び込んでも助けにはならない。要点は、行動が求められる段階に入ったら、データがもっと欲しいという願望だけで、ブレインストーミングを続けることはできないということだ。
リスクプロファイルの評価は、今決めるリスクと、決めないリスクを比較する助けになる。
私はまず事業目標から始める。この決断は何を達成するためのものなのか。
次に、リスクを軽減するために自分がコントロールできるリソースを見る。
この2つの要因が相まって意思決定が形づくられる。利用できるリソースが多いほど、目標に到達するために取れるリスクは大きくなるかもしれない。リソースが少ないほど、そのリスクをより慎重に絞り込む必要がある。
本当の問題はデータ不足ではない
多くの組織が意思決定のまひに陥るのは、価値観を言語化していないからである。
データはある。売上がどれだけ落ちているか、利益はいくらか、顧客は何人いるか、まだどれだけ投資が必要かはわかっている。だが、価値体系がなければ、リーダーシップ、マネジメント、チームメンバーはなお混乱する。
私の見方では、あらゆるビジネス上の意思決定は、明示されていなくとも価値体系を反映している。中立は意思決定から価値観を取り除くわけではないが、価値観を言葉にしないままにしてしまい、それが混乱と弱い整合を生む。
中立は意思決定のまひを解決しない。実際には、対立する見方の間で「半分ずつ」にしようとすることを意味する場合が多い。だが、一方はコスト削減を主張し、もう一方は人への投資を増やすべきだと考えているときに、リーダーが異なる選択の背後にある価値観を言語化せずに中間に座ろうとすれば、どちらも満足せず、組織は整合性を失う。
その結果、中立はパフォーマンスの足かせになる。意思決定を遅らせ、目的をぼかす。だからチームが行き詰まっているなら、私はまず、すでに判断を形づくっている価値体系は何か、それが明示的に指摘されているかを問うだろう。
価値観を表に出し、チームを整合させる
よりよい道筋は、価値観を表に出すことである。
私が経営陣の一員で、何をすべきかについて議論があるなら、その議論はテーブルの上に出したい。全員がそれぞれの視点から主張すればよい。しかしその後、問いは「何が会社の目的に資するのか」に変わらなければならない。
ここで重要になるのがスコープである。状況と会社の限界が、どの道筋を取れるかを決める。
会社がすぐに破綻する状況なら、人員を削減せざるを得ないかもしれない。だが、投資する余力があり、人材が適切で、努力しており、市場環境としてもそうであるなら、正しい選択は投資かもしれない。
会社の価値体系は、誰もがそれに従えるように明示される必要があり、チームの努力は効果を最大化するために整合させなければならない。
中立は、組織が価値観を言語化し、努力を整合させ、目的に資することを妨げ得る。リーダーには、明確なオーナーシップ、明示的な価値観、そして今行動するリスクと行動しないリスクを評価する規律が必要である。目標は、事業がいま求める意思決定を下すことだ。



