マッキノンの運命を反転させる上で中心的な役割を果たしたのが、AIの台頭だ。4月に発表されたAnthropicのMythosモデルがあらゆるサイバーセキュリティ・ソフトウェア事業を根底から覆すのではないかという投資家の懸念は、その後和らいだ。ロンドンに拠点を置く調査会社Arete Research(アリート・リサーチ)のサイバーセキュリティ担当アナリスト、エリー・カーニーによれば、投資家は今、これらの企業を選別するようになっており、今後も存在意義を保ち、「バイブコーディング(AIへの指示だけで手軽にソフトウェアを作らせる手法)で置き換えられる」ことのないソフトウェア業界のセグメントについては、持ち高を維持するか、むしろ強気に転じているという。Oktaはその最大の受益者の1つだ。
「サイバーセキュリティは、エージェント型AIによる置き換えに対して十分に防御可能な分野だと当社は見ています」とカーニーは言う。「オンプレミス〔自社運用サーバー〕からクラウドへの移行期には、まずクラウド投資が先行し、サイバー(セキュリティ)投資はそれに遅れて続きました。今回はMythosや〔Anthropicの〕Project Glass Wingのようなものがあるため、サイバーセキュリティ投資の遅れははるかに短くなり、ほぼ同時に進むと考えています」。
人間が自らツールを使う場合でも、AIアシスタントに作業を任せる場合でも、企業は、しかるべき人間としかるべきAIエージェントだけが機密情報にアクセスできるようにしなければならない。AIエージェントを導入する企業が増えるにつれ、誰がどのアクセス権を持っているかを把握することはますます複雑になっている。これが、本人確認を行い、機密システムへのアクセスを制御し、組織の情報を安全に保つセキュリティツールを提供するOktaのような企業への需要を押し上げている。Oktaによれば、すでに91%超の組織が業務でAIを利用しており、AIエージェントが労働力の一部として当たり前になるにつれ、同社のサービスの重要性はさらに増すと多くの投資家は見ている。
「OktaはID・アクセス管理市場のリーダーの一角です」と語るのは、TD Cowenの株式調査部門マネージングディレクター、シャウル・エヤルだ。「この分野はおそらく、サイバーセキュリティ全体の中でも最もミッションクリティカル(業務遂行に不可欠)なカテゴリーの1つです」。
株価は依然として過去最高値を下回っているものの、この回復によってOktaの時価総額は40億ドル(約6455億円)超に戻り、投資家の信頼も再び高まった。今年発表した第1四半期決算では、売上高が前年同期比11.2%増の7億6500万ドル(約1235億円)となり、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレーをはじめとする複数のアナリストがOktaの目標株価を引き上げた。
そして、2026年通期の見通しが予想を下回ったことを懸念する投資家がいる中でも、マッキノンが最近のテレビ出演で発したメッセージはシンプルだった。「私たちの分野において、当社は明らかなリーダーです」。


