AI企業は今年、数千億ドル(数十兆円)規模の借り入れを行っている。今のところ、それが社債市場を乱している兆候はほとんど見当たらないと債券投資家は言う。だが、株式投資家の中には、この状況から恩恵を受けている者もいる。
ウォール街は、自らの懐がどれほど深いのかを、今思い知りつつある。
ゴールドマン・サックスの試算では、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタといったハイパースケーラー(hyperscaler、大規模なデータセンターを運営する巨大IT企業)は、2030年までにAIインフラへ約5兆3000億ドル(約853.3兆円。1ドル=161円換算)を投じるとみられる。バークレイズのアナリストは、これらの企業が今年だけで2000億ドル(約32.2兆円)を超える債務を発行すると予想しており、借り入れは2027年にかけてさらに膨らむとみている。
これだけ支出することに異論を唱える者はいない。議論の的は、その先で何が起こるかである。
アポロ(Apollo)のチーフエコノミスト、トルステン・スロックは今週、これほどの規模の借り入れは、米国債やその他の債券への投資意欲をすでに押しのけ始めていると論じた。
だが、コロンビア・スレッドニードル(Columbia Threadneedle)で債券調査のグローバル責任者を務めるトッド・ザッカーは、社債市場を見るかぎりそうした兆候は「少なくとも今のところは」確認できないと語る。
「この利回り環境なら社債を買いたいという需要は根強く、AIに関係のない発行も好意的に受け入れられている」と彼は言う。
データも、ザッカーの見方を裏付けている。投資家が米政府にではなく企業に貸すとき、どれだけ利回りを上乗せして求めるかを示すのが「ICE BofA米国社債指数オプション調整後スプレッド」である。これは6月末時点で約0.76ポイントと、年初からほとんど変わっていない。仮に投資家が企業への融資に神経質になっているのなら、この差は広がっているはずである。
それどころか社債スプレッドがこのところ動いているのは、AI関連の債務が大量に発行されているからというより、むしろイランとの紛争でサプライチェーンが混乱しているためだと、ザッカーは指摘した。



