日本の中堅・中小企業が築いてきた技術は、長らく個社の資産として語られてきた。だが、グローバルな資本移動と地政学的な緊張が経営の前提となったいま、その技術をどう承継するかは、その企業のみの問題にとどまらず、産業の競争力と国益にも関わる主題へと位置づけが変わりつつある。
後継者不在による事業承継の波が押し寄せるなかで、経営者は「誰に、何を、どう託すか」という問いに、経済安全保障という新たな視点を重ねて向き合うことを求められている。本イベントでは、この主題を、立場の異なる3人の実務家とともに掘り下げる。
承継は、引き継いで終わりではない
事業承継を「経営者が代わること」としてのみ捉えると、本来問われるべき論点を取り逃がす。
株式や経営権が移ったその先で、技術はどのように扱われ、人材は定着し、長年培われたノウハウはどこへ向かうのか。承継をめぐる問いは、引き継いだ後にこそ続いていく。
そしてその判断は、もはや企業の内部だけでは完結しない。
中堅・中小企業が磨いてきた技術やノウハウは、自社の資産であると同時に、取引先や産業のサプライチェーンを支える点のひとつでもある。「誰に、何を、どう託すか」という選択は、企業単体の損得を超えて、日本の産業基盤に関わる経営判断となっているのだ。
背景には、避けがたい数字がある。経済産業省の試算によれば、2025年時点で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人にのぼり、うち約半数が後継者未定とされてきた。現状が放置されれば、累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われかねないと指摘されてきた。後継者が見つからなければ、黒字の企業であっても廃業を選ばざるを得ず、その技術は静かに途絶えていく。事業承継は、先送りの効かない経営課題となっている。
「誰に託すか」に、経済安全保障の視点が加わる
ここ数年で新たに重みを増したのが、経済安全保障の視点である。
外国資本による買収提案や、買収を経た技術・ノウハウの国外流出は、件数こそ限られるもののひとたび生じれば影響は大きく、すでに現実の論点となっている。政府も外為法の運用を見直し、安全保障上重要とされる業種については、外国投資家による一定の出資に事前届出を求めるなど、規制を段階的に強化してきた。
企業が持つ技術は、単体では一企業の強みにすぎなくとも、サプライチェーン全体で見れば代替が極めて困難なケースがある。それを誰が保有するかは、自社のみならず、取引先にとっても、産業全体にとっても意味を持つ。
経済安全保障の視点を加えると、同じ承継・M&Aであっても、検討すべき論点は変わってくる。買い手の資本構成、譲渡後の技術管理、競業避止やライセンスの設計──。価格や条件の優劣だけでは測れない検討事項が、承継の判断に加わっている。
ひとつの問いを、3つの視点から
経済安全保障の視点が加わったことで、事業承継をめぐる判断は、法務・技術・経営のいずれかひとつの専門性だけでは捉えきれないものになっている。
買い手の資本構成をどう見るか、技術や知財をどう守るか、承継した後の現場をどう導くか。これらは本来、切り離せない問いである。
本セッションでは、まずクロスボーダーM&Aと外為法に精通した弁護士の佐藤有紀氏が、近時の法規制をめぐる論点を整理し、議論の土台を共有する。そのうえで、立場の異なる3人による対話へと移る。
グローバルローファームを経て、M&A・投資やファンド組成を数多く手がけてきた佐藤氏。グローバル製造業で30余年にわたり国際法務を率い、海外4拠点で法務部門を統括してきた三輪淳之氏。後継者不在の中小製造業の承継を重ね、自らグループを東証グロース市場への上場へと導いた野見山勇大氏。同じ問いをそれぞれの専門性から検討することで、一面的な議論では見えてこない論点が立ち上がってくる。
参加者を絞った少人数の場である点も、この対話の性格を決めている。登壇者と参加者の距離が近く、その場で出された関心に沿って、議論は個別の事情に踏み込んだところまで進みうる。一般論にとどまらない議論の解像度こそが、本セッションの主眼である。
【イベント概要】
タイトル
経済安全保障時代における中堅・中小企業の事業承継と技術保全
主催
Forbes JAPAN
協力
Forbes JAPAN SALON
リンクタイズワークス
日程
2026年7月8日(水)
会場
キャノピー by ヒルトン大阪梅田
(〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6−38)
日時
12:30 受付開始
13:00 開演
15:00 終了予定
登壇者情報
佐藤 有紀|創・佐藤法律事務所 代表(弁護士・ニューヨーク州弁護士)
グローバルローファームの東京事務所パートナーを経て、2019年に現事務所へ。M&A・投資案件のストラクチャリングから契約交渉までを、外国企業・大企業からベンチャーまで幅広く手がける。国内外のファンド(PE・VC・CVC等)組成にも携わる。Best Lawyers(Corporate and M&A Law 分野)にランクインし、Thomson Reuters の調査では「Stand-out Lawyer」に選出されている。
三輪 淳之|大阪国際大学 経営経済学部 教授・立命館大学 大学院 経営管理研究科 授業担当講師・広島大学 法科大学院 教育課程連携協議会 委員
パナソニックで30余年にわたり国際法務に従事。英国・ベルギー・シンガポール・米国の海外地域統括本社でリーガル部門責任者を歴任し、M&A、国際契約、コンプライアンス、コーポレートガバナンス、訴訟対応などを担ってきた。国内外で企業の取締役・社外取締役も務める。
野見山 勇大|株式会社セイワホールディングス 代表取締役社長
父から引き継いだ債務超過の会社(当時年商1億円)を再建。その後、日本の構造的課題である事業承継の解決を掲げ、後継者不在の中小製造業を連続的に承継し、独自のプラットフォームでバリューアップを進めてきた。2026年3月27日、東京証券取引所グロース市場に上場(証券コード:523A)。著書に『会社を殺さないための事業承継の教科書』。
対象
技術を有する中堅・中小企業の経営者、後継者、事業承継担当者
定員
20〜30名(少人数制・参加無料・招待制)
※プログラムは、経済安全保障時代の事業承継をテーマとした基調講演に加え、M&A・知財・法務の論点を扱うセッションを予定しております。
※内容・時間は予告なく変更となる場合がございます。
全国5都市での開催
本企画は、名古屋を皮切りに、全国5都市での順次開催を予定。
・Vol.01 名古屋 2026.06.29 ※ 開催済み
・Vol.02 大阪 2026.07.08
・Vol.03 東京 2026.08.27
・Vol.04 福岡 2026.09.17
・Vol.05 仙台 2026.10.28
※Vol.03(東京開催)以降は現時点での仮日程であり、変更となる可能性がございます。



