自動化で人は解放されるのか、それとも職を失うのか
JPモルガンは、このエージェント型への変革が成長を引っ張ると考えている。手間のかかる作業を自動化し、顧客体験を良くするからだ。大量の反復作業は機械に任せ、その分だけ人間はもっと役に立つ仕事に回れる、という発想である。
だが、その人々には実際に何が起こるのか。
一部部門の10%削減は控えめ、ダイモンが雇用喪失を明言
同行は、一部の従業員が去らざるを得ないことを率直に認めてきた。2025年、同行は投資家に対し、AIによって業務部門と口座サービス部門で人員を10%削減できると説明し、しかもこれは控えめな見積もりだと述べた。
ダイモン自身も、AIは雇用を奪うと考えており、それに異を唱える人は「現実から目を背けるのをやめる」べきだと語っている。
実際の従業員数は横ばい、事務職が減り技術職が増加
もっとも、これまでのところ従業員数は横ばいである。報道によれば、事務や支援の部門では人員が減った一方で、顧客と接する職や技術職の従業員はむしろ増えているという。
若手とシニアを6対1から4対1に、経験を社内に残す
検討されている案の1つに、若手バンカーとシニアバンカーの比率を6対1から4対1に引き下げるというものがある。定型作業を自動化するのに加え、これによってシニアは若手1人ひとりの指導や育成にもっと時間を割けるようになる。
見落としてはならないのは、同行がこうした人員の配置転換への対応を、経営戦略の目標として位置づけている点だ。再訓練や再配置のプログラムは、同行がお金をかけて育ててきた経験やスキルを社内に残すことを、はっきりと狙って設計されている。
こうして見ると、同行はAIエージェントの影響をうまく管理し、その機会を最大限に生かすための一連の戦略をそろえていることがわかる。とはいえ、180億ドル(約2.9兆円)の技術予算を持つ企業には簡単に思えても、それ以外の私たちはここから何を学べるだろうか。
業務フロー起点・接続基盤・人材維持を中小企業も実践できる
JPモルガンがこれほど野心的なエージェント活用を実現できるのは、新しく使えるようになった技術だけでなく、新しい考え方も大切にしてきたからだ。
ツールではなく業務の流れに目を向けることで、同行はAIを、無駄の削減や顧客体験の向上といった経営上の優先課題に直接あてはめられる。うまくいかない企業は、既存のサービスにチャットボットを継ぎ足し、あとは良い結果が生まれるのを待つという安易な道を選びがちだ。だが残念ながら、戦略的な方向づけがなければ、良い結果はめったに生まれない。
何千ものツールとAIをつなぐ「配線」が、本物と寄せ集めを分ける
同行はまた、大事な課題がもう1つあることも理解している。従業員が日々使う何千ものツールやアプリにAIがつながるように、そのための土台を整えることだ。AIとこれらのツールをつなぐ「配線」を築けるかどうかが、本当にエージェント型になった企業と、試験的な取り組みや実証実験を寄せ集めただけの企業とを分ける。
そして同行は、人員が過剰になり配置転換が避けられないという現実について率直に見解を示す一方で、研修や学び直し(リスキリング)の手も先回りして打っている。狙いは、必要なところで人を減らしつつ、スキルと経験は社内に残すことだ。信頼できる人材を手放し、その後任を1から育て直すより、こちらのほうがずっと安上がりになる可能性が高い。
以上は、JPモルガンのような大手銀行が数十億ドル(数千億円)規模のインフラ投資を前提にして進める戦略である。だが、私たちのような小さな企業でも、その多くは実践できる。業務の流れ(ワークフロー)から始め、それらをつなぐ土台を築き、そして働く人々を戦略の犠牲者ではなく、恩恵を受ける側にすることだ。


