設備投資は約11.2兆円、顧客の料金前払いかハードウェア持ち込みで負担軽減
ただし、落とし穴がある。しかも小さなものではない。これほどの需要に応えるには、巨額の投資を避けて通れないのだ。オラクルは設備投資に、純額で約700億ドル(約11.2兆円)の現金を投じる見込みだ。その資金をまかなうため、負債と株式でおよそ400億ドル(約6.4兆円)を調達する計画も立てている。この戦略を不安視する投資家もいる。短期的な収益性を犠牲にする大きな賭けであり、経営陣自身も、データセンターを拡張するにつれて粗利益率が「一段階下がる」と見込んでいるからだ。
しかし、オラクルがこの負担をどうさばいているかに注目してほしい。経営陣によれば、新規AI契約の大半は「ハードウェアは顧客持ち込み、または料金前払い」という形で結ばれている。こうすることで初期投資の負担の一部を顧客側に移し、オラクルは財務リスクを丸抱えせずにAIインフラを増強できる。前例のない規模の拡張に伴うコストをうまく処理する、巧みなやり方だ。なお、特定の銘柄ではなくソフトウェアセクター全体に投資したい場合には、IGVのようなソフトウェアETF(上場投資信託)がオラクルを最大級の組み入れ銘柄の1つとしている。
問われるのは新規顧客の獲得でなく、売約済み需要を納品する実行力
市場はコストとリスクばかりに気を取られているように見える。だが、本当に注目すべきは、すでに売約済みとなった需要の途方もない大きさである。オラクルは事実上、これから築く事業を先に売り切ってしまったのだ。この大規模な拡張をやり遂げ、歴史的な受注残を売上と利益に変えられれば、同社は単に事業を維持するどころか、まったく別次元の企業へと変貌するだろう。つまり、ここからの成長に賭けることは、新規顧客を獲得できるかどうかに賭けることではない。すでに売れたものをオラクルが確実に納品できるかどうか、その実行力に賭けることなのである。
好機が本物かは数字に表れる──業績予想の引き上げがその証拠に
こうした好機は、数字に表れ始めて初めて意味を持つ。そして最初の具体的な証拠は、経営陣が示す業績見通しに表れる。企業は、新たな収益を実際に見込めるようになった瞬間、業績予想を引き上げる。そして、引き上げられた予想を市場がすでに評価し始めているなら、それは好機が現実のものになりつつあることを示す、最も分かりやすいサインの1つだ。現在、シーゲイト・テクノロジー(STX)、タペストリー(TPR)、テキサス・インスツルメンツ(TXN)が、これと似た数値上の特徴を示している。


