このコラムでは、韓国のソウル周辺にある、日本では見たこともないディープなチャイナタウンやユニークな多国籍タウン(チャイナタウン=ソウル市永登浦区大林、多国籍タウン=京畿道安山市、ロシア・ウズベキスタン街=仁川広域市延寿区「ハムバク村」)を訪ね、これまでレポートしてきた。
これらの地区で見られるのは、韓国の一般の街区とはまったく異相の世界である。
そこには、日本で起きている現象とはずいぶん異なる、韓国ならではの目を見張るような多文化社会の進展がある。そこで感じるのは、ある種のおおらかさとともに、一方で一般のソウル市民との隔たりも感じられ、それがどういうことなのか、気になるところでもあった。
韓国の事情にあまり精通していない筆者にはうまく言語化できないのだが、多文化社会の受け止め方が、日本と韓国では少し違うのではないかと思う(もちろん、どちらが正しいか正しくないかと、そういう話ではない)。
今回は、その相違をさらに考察するべく、ソウルで一般的に知られる2つの飲食街(建大入口、新村)を訪ね、そこで見られるガチ中華の出店状況を、東京のそれと比較してみたい。ソウルでも飲食街へのガチ中華の出店は、東京と同じく増えているからだ。
バリエーションに乏しいソウルのガチ中華
東京でガチ中華が多く出店されているエリアとしては池袋や上野・御徒町、高田馬場などが挙げられるが、ソウルにも同じように、「ガチ中華タウン」がいくつかある。
なかでもよく知られているのは、地下鉄2号線「建大入口」駅近くにある通称「ヤンコチ通り」だ。ちなみに「ヤンコチ」とは「羊肉串」の韓国語だ。
建大入口駅から徒歩で2分。高架の2号線が走る嵯峨山路の南に並行して東西に約700メートル延びているのがヤンコチ通りで、驚くほどの数のガチ中華の店が軒を並べている。池袋や上野のように、繁華街全域に広く点在しているというよりは、高田馬場の早稲田通りのように通りに連なるかたちで出店しているのが特徴だ。
とはいえ、高田馬場では日本の飲食店の間にガチ中華の店がまだらに出店している程度なのに対し、ヤンコチ通りでは、ほぼガチ中華だけが軒を連ねていて、その密集ぶりにはまず驚いてしまう。
明らかにチャイナタウンを形成している前出の永登浦区の大林のように、プロック全体がガチ中華で埋め尽くされているのではなく、あくまで店はヤンコチ通り沿いに構えられていて、通りを1本外れると、視界に広がる景観が変わるのだ。



