永年、企業で戦略組織を率いてきたことから、しばしば、色々な業界の経営者から、次の質問を受ける。
「企業の経営戦略室など、戦略組織に向いている人材の条件は何か?」
多くの人は、この質問に対して「ビジネススクールなどで『企業戦略』を学んだ人材」といった答えが頭に浮かぶだろう。しかし、実はそうではない。
筆者の永年の経験では、戦略組織に向いているのは、「思考と行動が戦略的な人材」であり、言わば、「戦略思考が身体化された人材」である。
なぜなら、企業の戦略組織は、戦略を机上で「立案」するだけでなく、その戦略を現場と共に「実行」できて、初めて意味があるからである。だが、企業の戦略組織には、戦略を「立案」すれば良いと思い込んでいる人材も、決して少なくない。
では、「戦略思考が身体化された人材」、「思考と行動が戦略的な人材」とは、いかなる人材か。
例えば、オフィスで上司の部長から「田中君、ちょっと来てくれ」と声がかかる。部長席まで行くと、部長から「あの件、どうなっている?」と訊かれる。すぐに「はい、A社には、明日10時までに返事をくれるよう伝えてあります。その回答がノーの場合には、明日中にB社に声をかけ、直ちに第2案で動きます」と答えるスタッフがいる。このスタッフは、部長から声がかかった瞬間に、部長から何を訊かれるかを推察し、席まで歩いていく数秒の間に、何をどのように答えれば良いかを考えている。
実は、現在の日本企業には、こうした「思考と行動が戦略的な人材」は、残念ながら極めて少ない。その理由は、そもそも、そうした人材を育てられる優れた管理職が“絶滅危惧種”になっているからであるが、では、こうした人材を育てるために、経営者は、どうすれば良いのか。
本論では、筆者が実践している方法を伝えよう。
それは、「すべての会議を戦略的に組み立てる」という指導をすることである。具体的には、会議が始まる前に、参加者が、どのような考えや思いであるかを推察し、その会議が終わったとき、どのような考えや思いに変わっていてほしいかを考え、そのために、最も効果的な順序で情報を伝え、参加者の自発的な意見を引き出し、こちらの考えや思いを謙虚に伝えることである。しかし、こうした「会議の戦略」を実行できる人材は、実は極めて少ない。



