早い段階から大きな責任を任せる
会社を興す前、私はメディア企業でソフトウェア開発者として働いていた。そこで気づいたのが、昇進をめぐる「どうにも抜け出せない矛盾した状況」だ。上位のポストに就くには特定のスキルが必要なのに、会社は若手にそのスキルを磨く機会を与えていなかった。その結果、昇進のポストはしばしば外部からの採用者に回った。社内で昇進を目指す意欲はしぼみ、それとともにモチベーションも失われていくことが多かった。
当社では、本来ならもっと上のポストで求められるスキルを使う機会を、若手社員に意識的に与えるようにしている。例えば、小規模なものでもプロジェクトの指揮を任せ、チームの率い方や、途中で起きる人間関係の衝突への対処を学んでもらう。プレゼンテーションが必要になれば、入社間もない社員にその役目を回し、効果的に伝える力と、その場で考える力を早くから身につけられるようにしている。
その結果、こうしたスキルは、外から人を採って補うものではなく、社内で育てるものになっている。
メンターシップ制度にパワースキルを組み込む
採用時にソフトスキルを見抜き、実務の中で育てる。これは組織にパワースキルの文化を根づかせる優れた方法だ。ただ、それを確かなものにするには、成長途上の社員がこうしたスキルについて率直に話せる場──質問し、フィードバックを受け、助言を求められる場──も欠かせない。そこで大きな役割を果たすのが、メンターシップ(指導・助言)制度である。
ハーバード・ビジネス・レビュー誌は、「全員参加型」のメンタリングを推奨している。すべての社員にメンターを割り当て、日常的な業績評価や能力開発の面談にメンタリングを組み込むという考え方だ。こうした定期的な対話は、パワースキルを話題にする絶好の機会になる。
当社のメンターは、メンティー(指導を受ける側)と定期的に面談し、進捗を確認している。仕事のストレスにどう対処しているか、職務に求められるパワースキルをどう感じているか、次はどこを目指したいのかといった点だ。メンティーは、自信のない分野を伸ばすための教材や情報源を尋ねることも含め、どんな質問でもできると分かっている。メンターシップが全社の日常業務に組み込まれれば、スキル開発は「あれば嬉しい福利厚生」ではなく、当たり前の慣行になる。それが私たちの実感である。


