AI時代には、技術スキルはもはや採用で最も重視される基準ではない。状況の変化があまりにも速いからだ。代わりに重要性を増しているのが、感情知能(Emotional Intelligence、EQと表現されることも)のようなスキルだ。その場その場で感情をどう抑え、どう扱うか。こうした目に見えにくい要素は時間とともに積み重なり、やがて結果を左右する。テニス選手がセットポイントを取れるかどうかは無数の小さな判断の積み重ねで決まり、それが最終的に試合の勝敗を分けるのと同じだ。
私はかつて、フルタイムで働きながら自分の会社を立ち上げた。当時の毎日は、大小さまざまな無数の決断の連続だった。不安、完璧主義、自己不信とも闘っていた。しかし、そうした感情を観察してコントロールする術を学んだことで、燃え尽きを防げただけでなく、成長を続け、レジリエンス(逆境から立ち直る力)を養うことができた。感情をうまく扱えるかどうかが、途中で失速するか、前に進み続けるかの分かれ目だったのだ。
AIが単純な定型業務を担うほど、EQのようなスキルの価値が高まる。こうしたスキルを「ソフトスキル」ではなく「パワースキル」と呼ぶジョシュ・バーシンのような専門家の考えに、私も賛成だ。
ここからは、今の従業員に最も求められるスキルは何か、そしてリーダーが職場でそれをどう育てればよいかを、詳しく見ていこう。
面接でパワースキルを見抜く
社内でパワースキルを育てる取り組みは、採用の段階から始まる。採用でAIが役立つとしても、人間の目は欠かせない。数値化しにくいスキルを最もうまく見極められるのは、人間だけなのだ。
リーダーや採用担当者は、まず自分の組織にとってどのスキルが最も価値を持つかを考えるとよい。例えば当社の場合、社員は主にオフィスで働いている。だからチームワーク、協調性、共感力が欠かせない。経験を軽んじるわけではないが、向上心や伸びしろも同じくらい重視している。
私は面接を行う際(この仕事を完全に人任せにすることはない)、こうした資質を頭に置いている。共感力のある候補者は、相手の話に注意深く耳を傾け、言葉の裏にある意図をくみ取ろうとする。価値観、プレッシャー、モチベーションといった、その職務の人間的な側面を理解しようとするのだ。向上心があり伸びしろのある候補者は、目の前の職務の枠を超えた質問をしてくる。事業全体や会社の長期的な方向性に関心を示すのである。
自分の組織にとって最も大切な資質は何かを考え、それを面接でどう引き出すか、工夫してみてほしい。



