EUV装置を断たれた中国勢がコストで大手3社に劣る
とはいえ、中国のメモリー攻勢には、太陽光やEVといった他の産業にはなかった弱点がある。それらの産業で中国が勝てたのは、資金さえあれば誰でも手に入る技術を使い、誰よりも速く、安く工場を建てられたからだ。だが、メモリーは事情が違う。鍵を握るのは、ある1つの装置──オランダのASMLだけが製造するEUV(極端紫外線)リソグラフィー装置(回路パターンをウエハーに焼き付ける露光装置)である。この装置はDRAM生産に必須ではないものの、最先端チップを効率よく製造するには欠かせない。米政府はASMLに対し、中国企業へのEUV装置の販売を禁じている。そのため、中国政府がいくら資金を注ぎ込んでも、CXMTは旧式の装置でチップを作り続けるしかない。
その差は数字にはっきり表れている。CXMTのDDR5のダイ(ウエハーから切り出される個々のチップ本体)は、サムスンの同等品より約40%も大きい。つまり、ウエハー1枚から取れる良品チップの数が少なく、コスト構造は優れているどころか、むしろ不利なのだ。ダイが大きくなるのは、まさにEUVなしで製造していることの副産物である。旧式の装置では回路を高密度に詰め込めないため、同じ性能を出すのにより多くのシリコンが必要になる。CXMTのビット当たりコストは、依然として大手3社を30%以上も上回る。つまり、現在の黒字は製品の実力による勝利ではなく、市場全体の価格が異例に高いおかげにすぎないことを示唆している。
CXMTのHBMは試作段階、ライバルは次世代HBM4を出荷済み
この差がさらに際立つのがHBMだ。HBMはAIアクセラレーターに使われる高帯域幅メモリーであり、SKハイニックスとサムスンの業績急伸を支えている分野である。CXMTはファーウェイなどの顧客にHBM2とHBM3のサンプルを提供した段階にとどまり、商用規模での量産は遅れ続けている。その間に、ライバル各社はすでにHBM4の出荷を始めた。DDR5と違い、HBMで追いつくには、製造規模の拡大や資本の投入だけではとても足りないのだ。
中国台頭でも、マイクロン・サムスン・SKハイニックスはHBMで優位を維持
マイクロン、サムスン、SKハイニックスにとって、中国の台頭は課題ではあるが、会社の存亡に関わるものではない。CXMTは汎用DRAMで侮れない競合に育ちつつあり、パソコンやスマートフォン向けの価格を押し下げる可能性がある。だが、投資の主戦場はすでにHBMに移っている。HBMではAIアクセラレーター向けの需要が引き続き強く、技術面の参入障壁もはるかに高い。中国がEUVリソグラフィーと先端HBMの製造技術を手にできない限り、既存大手は業界で最も成長が速く、最も収益性の高いこの市場でリードを守り続ける公算が大きい。
輸出管理と通商政策が、中国勢の世界進出スピードを左右
とはいえ、業界の行方を左右するのは技術だけではない。規制もまた大きな要因だ。輸出管理、ライセンス供与の判断、通商政策のあり方が、中国のサプライヤーがどれだけ速く世界に進出できるか、そしてメモリー市場のどこまでが最終的に競争にさらされるかを決めることになるだろう。


