スペースXは再利用型ロケットの打ち上げで最もよく知られているが、同社が実現を目指す軌道経済(オービタル・エコノミー)についてはそれほど知られていないかもしれない。
投資家の間で話題に上ることが少ない「小惑星採掘」
しかし、それよりもさらに投資家の間で話題に上ることが少ない、一見するとSFのような未来的な活動が存在する。それが「小惑星採掘」だ。米国時間5月20日に提出された新規株式公開(IPO)の申請書類で言及されているように、小惑星採掘は現在、複数の企業によってかつてないほど真剣に模索されている。これらの企業はすでに机上の研究段階を脱しており、アストロフォージが深宇宙の小惑星撮影ミッションを実施したほか、その他の企業も将来の小惑星採掘ミッションに向けた実証ハードウェアの開発や資金調達を進めている。
スペースXが申請書類に記載したからといって小惑星採掘がすぐに実現するわけではないが、この構想が世界で最も注目される民間宇宙開発企業の戦略に組み込まれたことは確かだ。そこで本稿では、その商業化は最近までほとんど理論上のものとされていた小惑星採掘について、知っておくべきすべての背景を解説する。
世界市場規模は、2035年までに約1.83兆円に拡大との予測
スフェリカル・インサイツ&コンサルティングが2025年に発表した調査レポートによると、世界の小惑星採掘の市場規模は、2024年の21億2000万ドル(約3434億4000万円。1ドル=162円換算)から2035年までに113億ドル(約1.83兆円)へと拡大すると予測されている。
スペースXは「インフラ」として位置づけ
スペースXは小惑星採掘を宝探しではなく「インフラ」として位置づけ、小惑星から獲得した資源によって宇宙を拠点とする産業を支えたり、地球から打ち上げる物資の質量を削減したりといった目標を掲げている。
小惑星採掘おいては、白金族金属よりも先に、炭素系の物質を主成分とする小惑星を意味する「C型小惑星」に含まれる水が重要になる可能性がある。水は生命維持や酸素の製造、あるいはロケットの燃料として利用できるため、地球に持ち帰る白金よりも、宇宙空間においてはるかに有用性が高い。
巨額の費用がかかる小惑星採掘
一方で、小惑星採掘には巨額の費用がかかる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ2」プロジェクトでは2020年に小惑星「リュウグウ」からサンプルを持ち帰るのに約1億5000万ドル(約243億円)が費やされ、NASAの「オシリス・レックス」ミッションでは2023年に小惑星「ベンヌ」からサンプルを持ち帰るのに約11億6000万ドル(約1879億2000万円)が投じられた。



