ーー 今回の調査では、ポジティブな結果ばかりではありませんでした。
岡村:そうです。むしろ私は、この調査の価値は課題が見えたことにあると思っています。
例えば、16%が職場で差別や不公平な扱いを経験したと回答しました。さらに11%は「答えたくない」と回答しています。登録支援機関を通じた調査でこの数字ですから、実際には表に出ていない経験もあるかもしれません。受け入れる以上、企業側も社会側も改善していかなければいけない。それもまた事実です。

ーー 日本語能力についても興味深い結果でした。
岡村:はい。在留5年以上でも、55%がJLPT(日本語能力試験)の資格を持っていませんでした。これは、「生活できている」ことと、「日本社会へ深く統合されている」ことは必ずしも一致しないことを示しています。日本語教育の在り方も、企業任せではなく社会全体で考える必要があります。

ーー アルベルトさんご自身は、「生まれる場所は選べないが、暮らす場所は選べる」という言葉を掲げています。
岡村:私は、その考え方をずっと大切にしています。だからこそ、誰でも受け入れればいい、という考えではありません。日本文化を理解し、日本社会で暮らしたいと思う人。そして受け入れる企業や地域社会。双方がフェアであることが大切です。受け入れる側だけが我慢する社会でもなく、来る側だけが我慢する社会でもない。そのバランスをつくることが、本当の意味での共生だと思っています。
ーー 今後、日本は外国人材政策をどう進めるべきでしょうか。
岡村:まず必要なのは、「イメージ」ではなく「データ」で議論することです。海外人材という大きな括りではなく、在留資格ごと、業種ごと、地域ごと、そうした実態を見ながら制度を設計していく。今回の調査も、その第一歩です。私たちは今後も定点観測として継続的に調査を行い、実態を可視化していきます。政策も企業も、感情ではなくエビデンスを土台に議論できる社会にしていきたいですね。
「外国人を受け入れるか、受け入れないか」という二項対立ではなく、「どのような人材を、どのような制度で受け入れるのか」。今回の調査は、その議論を"感情"から"事実"へ移す材料を提示したと言えるだろう。75%が日本で働き続けたいと願い、年間3365億円の税・社会保険料を支えながら、一方で差別や言語の壁にも直面している──。日本社会が向き合うべき現実は、賛成か反対かではなく、データの先にある「共生の設計」にあるのかもしれない。


