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2026.07.15 10:45

「旅行者の時間配分」から考える観光 地域の価値へ還元するには

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3.地方に時間を割く理由をつくるには

地方観光において、宿泊施設、交通アクセス、旅行商品の造成、販路、担い手といった供給条件の整備が必要であることは言うまでもない。ただし、いま地方が直面している課題はそれだけではない。受入条件が整ったことと、旅行者がその地域に時間を割くことは別の問題である。

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旅行者にとって旅の時間は限られている。地方が向き合うべきなのは、「来てもらえるか」だけではなく、限られた日程の中で、なぜその地域に半日、1泊、あるいは2泊を使うべきなのか、目的となる価値を示せているかどうかである。

つまり、地方観光の争点は“選ばれる理由”を設計することにある。特定の関心を持つ旅行者に刺さるテーマ型のツアーでもよい。特別な目的がない旅行者でも、そこで何をして過ごすのかが自然に想起できる体験でもよい。名所を巡るのではなく、その土地で過ごす時間そのものに価値を感じさせる見せ方でもよい。重要なのは、そうした要素を、旅行者の旅程を実際に動かす水準まで磨き上げることである。

地方観光にいま必要なのは、新しい言葉や概念を増やすことではない。その地域に時間を使う理由を具体的に形にし、選ばれる状態をつくっていくことである。

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4.地方に向いた時間を、地域に残る価値へ変えられるか

さらに言えば、地方に時間が向くことは中継的な目標であるということだ。目指すべきは、その時間が地域での宿泊、飲食、体験、移動、購買へとつながり、事業者の利益、再投資、雇用へと結びつくことである。旅行者が地方に来ても、地域に価値が残らなければ、観光が地域にとって意味を持ったとは言いがたい。

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この意味で、第5次観光立国推進基本計画に掲げられた地方部延べ宿泊者数、消費単価、リピーター数、宿泊業付加価値額といったKPIは、単なる集客指標ではない。旅行者の時間配分を変え、その滞在を地域内での消費や継続的な事業機会に転換できているかを問う指標として読むことができる。なかでも宿泊業付加価値額は、観光を来訪者数ではなく、地域に付加価値を残す産業として捉える視点を示している。

地方観光の課題は、旅行者の限られた時間を地方に振り向けることと、その時間を地域に残る価値へと変える仕組みをいかにつくるかという点にある。その実現を支えるのは、旅行者に選ばれる体験や滞在の場を生み出し続ける地域の事業者や担い手である。観光を地域に残る産業とするには、魅力づくりと消費機会の創出に加え、それらを担う事業者や担い手が持続的に活動できる環境を整えていくことが欠かせない。


西畠 綾◎PwCコンサルティング合同会社 Strategy&観光チームのシニアマネージャー。高付加価値観光の知見を強みに、地方誘客、広域観光、観光地づくりに関する政策立案・戦略策定・事業推進を手がける。PwCコンサルティング/Strategy&観光チームは、経済産業省、観光庁、JNTO、東京観光財団などを含む地方公共団体、民間事業者などに対し、過去15年間で約150件の観光関連プロジェクトを支援。観光地域づくり、観光コンテンツ造成、海外販路開拓、MICE誘致支援、持続可能な観光促進、観光人材育成、免税政策など、幅広いテーマを手がけている。


【以下参照】すべて、2026年4月22日閲覧

・日本政府観光局(JNTO)、2026.「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2026年)(PDF)

・ 国土交通省観光庁、2025.「2025年暦年の調査結果(確報)の概要

・国土交通省観光庁、2021.「2021年の訪日外国人旅行消費額(試算値)

・国土交通省観光庁、2026.「観光の現状等について

・ 国土交通省観光、2019~2025年.「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)

・ 国土交通省観光庁、2025.「2025年暦年の調査結果(確報)の概要

・ 国土交通省観光庁、「観光立国推進基本計画」(最終更新日:2026年3月27日)

文=西畠 綾 編集=鈴木奈央

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