
まず、地方部延べ宿泊者数である。計画では、2025年時点の外国人延べ宿泊者数の割合は地方部33%、三大都市圏67%とされている。地方部を1.3億人泊まで伸ばすということは、地方を訪れる人数を増やすだけでなく、宿泊場所の選択そのものを変える必要があることを意味する。訪日外国人旅行者数を6000万人と仮定すると、一人当たり地方部宿泊数は2泊を超える水準となる。
ポストコロナ期の2023年に決定された第4次観光立国推進基本計画でも、2025年までに訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊数を2019年の1.4泊から2泊へ引き上げる目標が掲げられていたが、実績は1.4泊にとどまった。地方部宿泊は、旅行者が都市部以外に1泊を割く理由を持てるかどうかを、直接的に問うKPIだといえる。
次に、一人当たりの消費単価である。2025年の訪日外国人一般客一人当たり旅行支出は22.9万円で、25万円目標にはなお上積みが必要になる。勘違いしてはいけないのは、単価を上げるとは、単に高い商品をつくることではないという点だ。宿泊、飲食、体験、移動、購買など、旅行者が時間を使う場面が増え、その時間が価値ある支出に変わらなければ、単価は上がりにくい。

リピーター数については目標が達成される可能性は高いものの、彼らをどう周遊させるかという課題は残る。計画では、6000万人のうち3分の2に当たる4000万人をリピーターとする目標が置かれている。
リピーターは地方部への訪問意欲が高く、日本文化や習慣への理解も深いと整理されるが、再訪者が増えることと、再訪時に地方へ時間を割くことは同じではない。再訪者であっても、地方でどのような時間を過ごせるのかが見えなければ、旅程は引き続き都市部や定番観光地に寄りやすい。リピーター政策の核心も、再訪回数そのものより、再訪時の時間配分を変えられるかどうかにある。
新設された宿泊業付加価値額は、他とは少し性格が異なり、旅行者の時間配分の変化が、最終的に地域の産業として残るかどうかを見る指標である。観光需要が地域に流入しても、低収益・低投資の構造にとどまれば、持続的な雇用や再投資にはつながりにくい。だからこそ、観光を来訪者数ではなく、地域で成立する産業として捉えようとしており、第5次計画が観光を「地域経済・日本経済の発展をリードする戦略産業」と位置づけている以上、この視点は大変重要である。
つまり、第5次観光立国推進基本計画のKPI群は、人数を積み上げることだけにとどまらず、旅行者の時間配分を変え、その時間を地域の宿泊、消費、事業機会にどう転換するかを問う指標として読むことができる。地方部への希望と課題が、ここに端的に表れている。


