26年1月、資生堂は組織改革によりCBOを新設し、橋本美月が就任した。藤原憲太郎CEO体制での新たな「ブランド経営」の正体に迫る。
2025年11月、2030年に向けた中期経営戦略で「コア営業利益率10%以上、ROIC(投下資本利益率)10%以上、ROE(自己資本利益率)12%以上」という高い目標を掲げた資生堂。「ブランド力の向上を通じた成長加速」を第一の戦略の柱とし、技術力を生かしたイノベーションの最大化、展開国拡大による成長加速、さらに新市場の創造を目指すと発表した。
その覚悟を象徴するのが、26年1月に新設されたCBO(最高ブランド責任者)というポジションだ。資生堂には、長らくCMOポジションがあったが、今回の中期経営戦略のもとブランド価値最大化に取り組むにあたり、CBOが誕生した。
「ブランドは戦略資産であり、ブランディングは経営における『基軸』のようなもの。一本筋が通っているからこそ、商品開発も宣伝も採用もすべてがバラバラにならずに同じ方向を向いて機能する」。こう語るのは、CBOに就任した橋本美月。これまで資生堂が培ってきたマーケティング力は、全社横断的なブランドマネジメントシステムへと進化しているのだ。
では、ブランディングは経営の基軸としてどのように機能していくのか。また、その際にCBOはどのような役割を担うのだろうか。
同社は2030年に向けて、新たなビジョンを「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」と定め、「一瞬も 一生も 美しく」をビジョンスローガンとして掲げた。橋本は「CBOとしての役割は、資生堂という企業の『基軸』を2030年に向けて構築し、これらのビジョンを現代そして未来において体現し続けるために経営の軸を通すこと」と強調する。
新経営体制では、CBOが注力ブランドを横断的に統括する体制を敷いた。これは、各ブランドの自律性を重んじながらも、CBOがグループ全体のポートフォリオの視点で「全社的な資源配分」に責任をもつことを意味する。研究、商品、顧客体験、そして企業の社会的姿勢を一貫したストーリーとして結実させるのだ。
「美容やラグジュアリーの領域において、企業価値を決定づけるのは、一過性の販促キャンペーンではなく、文化的な共感やお客さまの信頼の積み上げといったブランドエクイティ(資産的価値)そのものです。売り上げ目標を意識しながらですが、10年、20年先まで見据えた価格決定力とロイヤリティを築き上げていきます。CBOというポストの新設は、ブランドを短期的な手段ではなく、長期的な『戦略資産』として育成していくという我々の決意表明なのです」
ガバナンスに基づいたブランド育成
20年以上マーケティング業務にたずさわり、「クレ・ド・ポー ボーテ」ではブランドトップを務めてきたプロフェッショナルの橋本が語るブランドマネジメントの実践は、ブランドガバナンス(規律)に基づいたものだ。
「ブランドを守るためには信頼を裏切らないことが大切です。お客さまはスペックだけでは選びません。ブランド独自の価値観や姿勢、つまりブランドのもつ『人格』を信頼するからこそファンになってくださるのです。実際にクレ・ド・ポー ボーテでも、世界中どこで接してもその『人格』がブレないよう、顧客体験のあらゆる接点で徹底した一貫性を追求しました」
こうしたガバナンスを強化するためにクレ・ド・ポー ボーテではブランドアイデンティティの定義を組織内で浸透させてきた。



