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経営・戦略

2026.07.17 15:30

資生堂がCBOを新設した理由 ブランドを経営の基軸にする橋本美月が語る変革

橋本美月|資生堂 執行役 チーフオフィサー/チーフブランドオフィサー

「生産や出荷など、ブランドにかかわるすべての人がそのブランドの価値をしっかり理解し、日ごろから目線合わせをしていなければなりません」

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その鍵は「いかに自分事化できるか」だ。そのために、年に一度は各地域の代表から生産部門、工場、クリエイティブなどまでステークホルダーが顔を合わせる機会をつくり、その場で橋本が長期戦略から具体的な営業数値までを共有していた。

とはいえ、選ばれるブランドを育て、顧客との関係を維持し続けるのは「言うは易し、行うはがたし」と橋本は何度も口にする。

「どうしても、目先の数字のためにブランドを切り売りしたくなる誘惑が必ず起こります。しかし、ここで易きに流れればブランドの人格は毀損し、経営の基軸は歪んでしまう。厳格な規律をもって基軸を維持し続けることは、一見遠回りに見えますが、結果として価格競争を避け、高い収益性を維持し続けるための合理的な判断なのです」

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このガバナンスは、資生堂の最大の強みである研究開発力(R&D)でも実装されている。ブランドの個性を守るため、CTO(最高技術責任者)とCBOが密に連携し新技術をどのブランドに優先投入すべきかなどの投資判断を行う。この「選択と集中」のプロセスこそが、ブランド経営において重要となる。「ブランドが語る言葉の裏付けとして、科学的なエビデンスをもたせていく。技術も含めたブランド体験を世界中のお客さまに提供し、信頼を獲得していきたいです」

ブランドの価値を伝えるのは「人」

どれほど強固なブランドマネジメントシステムを構築しても、最後にブランドの価値を伝達するのは「人」だ。だからこそ同社は今、「資生堂人」の育成を強化し、投資している。「優れた価値を生む創造力と、それをお客さまの心に響く体験として届ける伝達力。『資生堂人』にはこの両輪を磨き上げてもらう。一貫性をもって体現できる組織へと変革していく計画です」と橋本。

「資生堂の真の強みは、最先端のサイエンスを核にもちながらも、日本独自の感性や文化的価値を統合した世界観を発信できる点にあります。変化の激しい市場環境だからこそ、揺るがない哲学と革新を両立させ、『一瞬も 一生も 美しく』という約束を世界規模で体現していく。資生堂という『人格』が、世界中のお客さまにとって『一生に寄り添う、なくてはならない存在』となり、日本発の美意識がグローバルのスタンダードになる。そんな未来を、この強固な戦略の先に実現していきたいです」

KEYWORD_01|R&D
資生堂は独自の研究技術を特定のブランドのコアとして、またコーポレート横断で活用することで、イノベーションを最大化する。後者については、多くのブランド・商品に展開することで、カテゴリーとしての競争優位を築く。2028年までに10以上の最新技術をブランドへ搭載し、間断なく発売予定。資生堂は、しみ、しわ、たるみといった肌悩みに関する技術に優位性を持つ。

KEYWORD_02|資生堂人
2030年に向けた中期経営戦略のなかで「ひとや社会と向き合い、美を問い続けることでたとえ困難な時にあっても世界と本物の価値を分かち合おうとするひと」と定義する。資生堂の強みである「価値創造力」と「価値伝達力」の融合を資生堂人が牽引することで、ブランド力向上を目指す。


はしもと・みづき◎1997年に資生堂入社。20年以上にわたり化粧品の販売とマーケティング分野で国際業務を牽引する。2012年に資生堂シンガポールの社長に就任。15年にクレ・ド・ポーボーテのブランドに帰任、22年にEO(エグゼクティブオフィサー)を経て、26年1月より現職。

文=古賀寛明 写真=若原瑞昌

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