──ハウセル氏が考える、お金の使い方と幸せの関係とは?
ハウセル:より良い人生を送るための「道具」としてお金を使い、自立や充足感を得るのは素晴らしいことだ。自立は非常に重要だ。本当の豊かさとは、お金を道具として活用し、欲望を制御して純資産を着実に積み上げ、経済的自立や自由な生き方を実現することだ。
一方、お金をステータスの「物差し」として使うと、話がややこしくなる。だからこそ、こう自問すべきだ。自分の人生を他者の人生と比べないとしたら、「どのような生き方を選ぶだろうか」と。上には上がいる。「社会的な比較」というゲームに勝つことなどできない。
見栄は称賛より嫉妬を招く
──見栄を張らないことが非常に重要だそうですね。
ハウセル:人間にとって、見栄を張るのは本能と言ってもいい。競争の激しい世界では、他者との比較は避けがたいものだ。社会的ステータス、特に見知らぬ人々からの評価を求めて見栄を張ることは、人々が最も陥りやすく、かつ避けるべき「罠」の典型だ。
人は、「他者よりお金をもっている」という、相対的事実を重視する。お金は、自分の競争力を他者に知らしめるための「シグナル」だ。しかし実際のところ、人は他者にさほど注目していない。また、例えば、大きな家は称賛よりも羨望(せんぼう)、つまり負の感情を招きやすい。
ひるがえって、人々が価値を見いだすのは、他者の物質的な豊かさでなく、知性や親切心、思いやりだ。人は、他者からの称賛を得るために物質的側面を過大評価し、内面的側面を過小評価する。
米著名投資家ウォーレン・バフェットは、人生の成功を「愛してほしいと思っている人たちから、実際にどれくらい愛されているか」で測るという。私が目指すのも、そうした境地だ。
──お金の使い方に正解はないとしつつ、6つの共通項を提示していますね。
ハウセル:全体を貫いているのは、お金に執着しないという考え方だ。まず、ひとつ目の共通項は、お金の使い方には、「より良い生活を送るための道具」と、「自分のステータスを測るための物差し」という2通りの使い方があるという点だ。
ふたつ目は、お金は有効な道具だが、使いこなさないと人生が容易に支配されてしまうという点だ。自分の価値は純資産で決まるという考え方は間違っている。
3つ目は、お金を使うことによる幸せは間接的なかたちを取る場合が多いということだ。邸宅を買っても社交に使わなければ、大きな幸福感は得られない。
4つ目の共通項は「お金について考えすぎない人ほど幸せになれる」というものだ。幸福の処方箋は、「もっていないもの」を追い求めることではなく、「今、あるもの」に心から満足することだ。
5つ目は、「もっとお金があれば幸せになれるわけではない」ということだ。そして、最後の共通項は、「お金の使い方に公式はない」という事実だ。
──幸福への近道とは? 幸せとは期待と満足のギャップなど、「対比」の重要性を強調していますね。
ハウセル:おいしい料理に感動するのは、それが、過去に経験したことがないものだからだ。美食も年中行事になると、喜びを感じない。日ごろはシンプルな生活を送り、特別なものをたまに味わうようにすれば、喜びが飛躍的に増す。
モーガン・ハウセル◎米VCコラボレーティブ・ファンドのパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフール」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。著書に累計800万部の世界的ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』、近著に『アート・オブ・スペンディングマネー』(いずれもダイヤモンド社)がある。


