それは公益性が高いインフラ事業者としての矜持ともいえる。
「そもそも戦後、GHQによって財閥解体されたとき、三菱にしても三井にしても、名前を捨てなかったですよね。ある意味では戦前のイメージをひきずることがマイナスになる時代であっても、看板を守り続けた。その矜持が日本のインフラを象徴するブランドをつくり上げたともいえます」
「産業革命以降、日本では世界の歴史・インフラを根底から変えるような発明はありませんでした。けれども日本企業は、インフラと世界の人を結ぶ材やサービスの供給を担うことで、世界経済に多大な貢献をし、成長を牽引してきました。次の40年、世界における巨大なインフラ転換の真っただなかで、日本企業はソフトとハード(実体インフラ)を融合することで、新たなプロダクトやサービスを想像し、世界に新たなコンパウンドグロースをもたらすことになるはずです」
すでに世界の投資家たちはそのことに気づき始めているという。例えば、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが日本の5大商社株の保有比率を5%から8.5%前後まで引き上げたのは2023年4月から6月にかけてのこと。三菱重工の株が急騰し始めた時期だ。
「実は日本の商社のように“なんでも手がけるビジネスモデル”はアメリカには存在しません。それに加えてバフェットさんは投資判断において、企業経営者の誠実さ(Integrity)を非常に重要視します。逆に数字ばかりを追いかける経営者は信用しない。つまりバフェットさんは、商社株を通じて、日本というブランドの信用力を買ったということだと思います」「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」──このマーク・トウェインの言葉は、阿部が好んで口にする言葉であり、本書に通底するテーマでもある。
「バフェットさんをはじめ、世界の投資家はそのことをよく知っています。日本に期待されているのは、かつての“ジャパン・アズ・ナンバーワン”の再来ではありません。コンパウンドグロースの担い手としての新たな登場です」
時代の転換点を生きる人に、「周期の境目」を見抜く新たな視座をもたらす「希望の書」である。
KEYWORD 02|「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」
作家マーク・トウェインの言葉。同じ出来事は起きないが、歴史上、似たようなパターンは繰り返されるという意味。なぜなら古来、人間の感情と行動は時代に関係なく、変わりないものだからだ。企業不祥事のパターンや株価に対する一喜一憂がそうで、「今」だけを見るのではなく、長期視点が大事という意味で阿部は使っている。
阿部修平◎野村総合研究所などを経て、1985年ニューヨークでアベ・キャピタル・リサーチ設立。クォンタムファンドなど欧米資金による日本株の運用・助言に従事。1989年スパークス投資顧問(現スパークス・グループ)設立、代表取締役社長。2012年より国際協力銀行(JBIC)リスク・アドバイザリー委員。


