<自分ができることだけをやるのは挑戦ではないと思いますね>
しかし、「最初の頃は、なんでこんなに努力しているのに成長できないのだろうとずっと思っていました」と言う。そこで気づいたのが「言語化」だ。事業の責任者として、責任を自覚していくにはもっと明確に言葉にしようと思って書いていくと、「具体的な目標をつくっていないことに気づきました。行き先を決めない限り、行きたいところには行けない。つまり、人生の目標を考えていなかったのです」という点に行き着いた。
「自分のキャリアというのは、自分でデザインして、自分で登らないといけませんよね。その過程で次のステップに行くために何をやったらいいのかを考える。それが若い頃にやることではないでしょうか」
<半分くらいは知らないことをやってみる>
挑戦について、半分くらいは自分が知っている領域で挑戦して、「もう半分は知らないけれど、できるかもと挑戦してみる」と言う。
「僕は、『1勝9敗』『成功は1日で捨て去れ』といった本を書いてきました。成功とは階段をまっすぐ昇って到達することなどほとんどなく、実態は10回挑戦して9回は失敗する。その失敗に蓋をするのではなく、失敗したから発見がある。失敗を認識すらできずに、成功したといい気になって思い上がっているほうが実は恐ろしいので
す」
「上」を知り、そのために行動をして、失敗をして、失敗から発見を生み出す。この繰り返しをして、9回失敗してこそ、大きな一勝を勝ち取るという。
<今がピンチであると感じる感性をもっていれば、創意工夫は可能です>
「自分たちがイケてると思っている人に未来はありません」と言う。「上には上がいる」ことを知らないから創意工夫をしなくなる。「世界に比べて給料がこんなに安くて、経済成長もできない日本の状態はイケていません。行動が評価される、そんな文化をつくることが大事なんです」。
70代になった今も「もっと若い時に挑戦すべきだったと反省している」と言う。そして、最後に彼はこう問うた。
「世界がこれだけ変化しているのに、受け身の姿勢であれば、翻弄され続けるだけで自分の人生は築けません。他人に振り回される人生でいいんですか。あなたは、これが自分の人生ですと言えますか。そう問いたいのです」
柳井正(やない・ただし)◎ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長。1949年、山口県生まれ。84年、「ユニクロ」1号店を広島に出店。91年、社名をファーストリテイリングに変更。90年代後半にフリースが大ヒットし、2005年の売上高は3兆7500億円を超え、世界3位のアパレル企業に。SPA(製造小売業)を基盤に、顧客ニーズをスピーディーに製造現場に直結させる「情報製造小売業」に進化させた。


