実は今回、うれしいことにダイヤモンド社から『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』という本を出版することになりました。本を出すとなると、周囲からは「その道のすごい専門家」のように見られるかもしれませんが、「すごいね」と言われると、どこか違和感を覚えてしまいます。
居酒屋の赤ワインで挫折した「元苦手民」だった
なぜなら私は、24歳頃までワインをほとんど飲まず、居酒屋のコースに出てきた赤ワインで「マズゥ!」と一度挫折した人間だから。
その後NTTで会社員をしていた頃に、スーパーの棚にある甘口ワインや、カルディの手頃なワインを手探りで買ってみるところから、私のワイン人生はスタートしました。
地道に国内外のワインの取材を重ねながら国際資格(WSET Diploma)を取得し、仕事にするまでになりましたが、自分の中には今も「ただのワイン好き」だった頃の目線がリアルに残っています。その等身大の感覚を失わなかったことが、この本を書くうえでの原点です。
「教養」への違和感
最近は本屋さんでも「教養」という言葉をよく見ますが、ワインの教養とは何でしょうか。ぶどうの品種やカタカナの産地名を丸暗記したり、高価な有名ワインのうんちくを語れたりすることでしょうか? 私は、そうした「お勉強」のようなアプローチこそが、逆にワイン嫌いを増やし、ハードルを上げていると感じていました。そんな私だからこそ、「ワインって難しそう……」と入り口で戸惑っている人たちが、「これなら面白い!」と身を乗り出してくれるような本を作れるはずだ、と思ったのです。
この本を書く中で、自分の中にあった反骨心にも気づきました。ワインというと、どうしてもヨーロッパの名門産地や高級ワインから語られがちです。でも、何もないところから始まった私には、その入口が少し遠く感じられました。だから、本ではあえてアメリカからスタートしました。ヨーロッパの伝統ではなく、ワインを一部の知識階級のものから解放し、誰もが楽しめる文化へと変えていった「民主化」の歴史から始めたかったのです。



