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食&酒

2026.07.08 16:15

田崎真也氏「98%は飲めたものではない」発言、日本自然派ワイン市場は未だ思春期?

造り手の感性を映し出すアートのようなラベルは、若年層がワインの世界へ足を踏み入れる、新たな入り口にもなっている。

曽我貴彦が導く、日本固有の「微生物」という勝機

では、日本ワインが向かうべき“大人”の成熟とはどのような姿か。北海道ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦氏は、日本独自の気候風土にこそ、圧倒的な強みがあると考えている。

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「乾燥した海外の国々とは違い、豊かな雨や山々に囲まれた日本は、多種多様な微生物が息づく国。海外の硬水では引き出せない『旨味』や出汁感を、日本の軟水と火山性土壌は表現できる」

曽我氏はここで、ワイン造りを「味噌」に例えた。世界中どこでも科学的なアプローチとマニュアルで造れる大手メーカーの味噌と、その土地の気候や蔵に住み着く固有の微生物によって唯一無二の味わいが醸される、農家の手造り味噌の違いだ。

マニュアル的な造りで世界のワインと同じ土俵で戦うのではなく、日本固有の環境が育む「個性の美学」を打ち出すこと。それこそが、グローバル市場における日本ワインの真の勝ち筋なのだという。

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カリスマ的な人気を誇るドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦氏
カリスマ的な人気を誇るドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦氏

このテロワールとの格闘は、生産者ごとに多様なアプローチを生む。有機の里として知られる埼玉県小川町で武蔵ワイナリーを営む福島有造氏は、植物の成長ホルモンを利用した完全無農薬・無肥料栽培を実践しつつ、多湿な日本で病害を防ぐためにポリエチレンシートの雨除けを活用するという現実的な選択をしている。環境負荷への罪悪感を抱えつつも、化学農薬やボルドー液を排除して「健全なぶどうを得る」ための、現場主義の優先順位の判断だ。

手法やルールは、あくまで「美味しいワイン」というゴールにたどり着くための手段に過ぎない。「亜硫酸は料理における『塩』と同じ。入れすぎれば台無しになるが、味を締める役割もある。その塩梅を見極めるのが醸造家の仕事」という須賀氏の言葉通り、バズワードに縛られず、どれだけ表現の引き出し(フリートーク力)を持てるか。それこそが“成熟”への条件となる。

そして飲み手や伝える側にも、一段上のリテラシーが求められている。萩野氏は「人に例えると、足が臭いからといって全人格を否定する必要はないように、ワインの欠点にも種類と程度と他の要素とのバランスがある」と語る。「もちろん致命的な欠点はダメだが、多少の欠点があっても、それを補って余りあるぶどうの強さや旨味があれば評価すべき。良さと悪さを同時に伝え、飲み手にトータルで判断してもらうことが重要だ」と強調した。欠点ばかりをあげつらえば、消費者は「我慢できるか否か」という消極的な選択しかできなくなってしまうからだ。

クラシックか、ナチュラルか。異なる製法や思想を互いに否定し合うのではなく、多様性を許容し合う文化を育むこと。そして、真に美味しく、テロワールを誠実に表現したワインだけが残っていく未来。田崎氏の厳しい言葉も、サンビオーズの挑戦も、そしてRAW WINEの熱狂も、すべては日本のワイン市場が“大人”になるための、健全で必然な成長痛に違いない。

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文=水上彩 編集=石井節子

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