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食&酒

2026.07.08 16:15

田崎真也氏「98%は飲めたものではない」発言、日本自然派ワイン市場は未だ思春期?

造り手の感性を映し出すアートのようなラベルは、若年層がワインの世界へ足を踏み入れる、新たな入り口にもなっている。

農法に踏み込んだ新基準「サンビオーズ」

こうした状況に対し、市場を健全な方向へ導こうとする自浄作用の動きも、国内の自然派生産者たちの間で始まった。2026年3月に発足した「サンビオーズ(Symbiose)」の設立だ。

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「海外のワインと日本ワインの基準を一緒にしましょう」と謳うこの会には、ドメーヌ・オヤマダ(山梨)の小山田幸紀氏を会長に、ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン(岡山)の大岡弘武氏、農楽蔵(北海道)、香月ワインズ(宮崎)など、日本各地を牽引する9つのワイナリーが集結した。彼らが定めたガイドラインは、有機栽培または同等基準を前提とし、銅剤の使用量を当面「6kg/ha/年以内」に制限するなど、醸造テクニック以前の「農法(ヴィンヤード)」に明確な基準を設けている。

ヨーロッパの乾燥した気候とは異なり、病害リスクの高い日本の高温多湿な気候において、この数値をクリアすることはハードルの高い挑戦である。それでも彼らがこの厳格な基準を設けたのは、造り手自身の意識向上にとどまらず、「情報の開示を通じて消費者の意識を変えること」を目的としているためだ。健全なぶどうを育む農法こそがワインの根幹であるという、世界基準のメッセージがそこには込められている。

ナチュラルワインラバーで賑わうRAW WINE TOKYO 2026会場
ナチュラルワインラバーで賑わうRAW WINE TOKYO 2026会場

グローバルスタンダードを意識した動きが国内でも加速するなか、筆者も、東京で開催された世界最大級の自然派ワインの祭典「RAW WINE TOKYO」へと足を運んだ。このイベントを率いるのは、フランス人女性として初めて世界最難関のワイン資格「マスター・オブ・ワイン(MW)」を取得したイザベル・レジュロン氏。彼女が世界各国でRAW WINEを展開する最大の目的は、添加物や化学技術に頼らない「プロセスの透明性」を市場に提示することにある。ボトルの中に何が使われ、畑でどう育まれたのか。その情報を開示し、不必要な介入を排除した本物のクオリティを飲み手に伝えるためのプラットフォームだ。

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世界から見た日本のナチュラルワイン事情

会場の熱気の中で、オーストラリアのワイナリー「スモールフライ・ワインズ(Smallfry wines)」のワインメーカー、ウェイン・アーレンズ氏はこう語ってくれた。

「2012年から何度も日本を訪れているが、日本の消費者の知識レベルと熱量には常に感銘を受けている。私の経験上、日本は間違いなく『世界で最も成熟したナチュラルワイン市場』だ。他国とは違い、完全にメインストリーム(主流)として定着している」

ウェイン・アーレンズ氏
ウェイン・アーレンズ氏

だが、こうした熱狂の裏で、市場はシビアな分岐点を迎えている。オーストラリアやハワイ、国内含め4拠点でワインを造る須賀貴大氏は、「日本のナチュラルとは?」で、この現状を冷静に見つめていた。

「今の日本ワインは、まだ“思春期”━━大人になっていない世界です。良くも悪くも、淘汰されていくのではないでしょうか」

須賀氏によると、オーストラリアでも10〜20年前に同様の熱烈なムーブメントが起きたが、市場が成熟するにつれ、「ナチュラル」という看板だけで中身(品質)が伴わない生産者や飲食店は次々と閉店に追い込まれたという。ブームが去り、日常の市場に馴染むなかで、言葉の枠組みではなく「単純に美味しいものが選択される」という本質的なフェーズへ移行したのだ。

次ページ > 曽我貴彦が導く、日本固有の「微生物」という勝機

文=水上彩 編集=石井節子

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