Video RebirthのBACHは、広告、エンターテインメント、映画制作、ゲームといった領域の企業顧客を狙う。同モデルの看板機能は、参照画像とテキストプロンプトに基づき、最大45秒のマルチショット動画を生成できる点だ。比較として、2月にリリースされたマルチショットAI動画生成の人気モデルであるバイトダンスのSeedance 2.0は15秒が上限で、動画と音声も入力できる。BACHの他の機能には、テキストまたは画像から最大10秒のクリップを生成すること、静止キャラクターを参照動画に結び付けることが含まれる。
Video Rebirthが競う市場は、混み合っているだけでなく運営コストも高い。動画生成にはテキストよりもはるかに大きな計算能力が必要になるからだ。AI動画競争の金銭的負担は、OpenAIが2026年3月、Soraプラットフォームの終了を突如決めたことで明らかになった。モバイルアプリは昨年9月のローンチ以来、ダウンロード数が約1000万に達し、ウォルト・ディズニーとの10億ドル(約1620億円)の出資およびライセンス契約(現在は解消)も確保していたにもかかわらずだ。Forbesは2025年11月、OpenAIがユーザーの要求に応じて10秒動画を数百万本生成するため、1日あたり約1500万ドル(約24億2000万円)を費やしていたと推定した。1本あたりのコストは約1.30ドル(約210円)だったという。
「OpenAIはAIの推論フェーズ(学習済みのAIを実際に作動させて動画を出力する段階)のコストに足を引っ張られていました」とリュウは語る。BACHが10秒クリップを生成するコストは「他のフロンティアモデルより大幅に低い」としつつ、競争上の機微を理由に具体的な数字は明かさない。同社が推論コストを下げられるのは、動画生成プロセスを最大10倍高速化できるという独自技術のおかげだとリュウは主張する。
「マルチステップ・サンプリング・ロス」と呼ばれるこの数学的手法は、生成過程での誤りを予測し、修正できるようモデルを学習させる。結果として最終動画を作るために必要なステップ数が少なくて済む。対照的に、多くの従来モデルは不具合を予測できず、その分実行に時間がかかるという。
財務効率は学習コストにも及ぶ。リュウは、BACHの学習に要した予算は同等のフロンティアモデルの「ごく一部」だったと主張するが、それ以上の説明はしない。Video Rebirthのトップによれば、ライセンス取得済みの映画やミュージックビデオ、社内で撮影したクリップなど、より少なく高品質な動画で学習したことが奏功した。多くは解像度720pだという。さらにBACHは、プロンプトへの追従とビジュアル生成のタスクを分割するよう設計されている。両方を単一の「脳」に任せる他モデルとは異なる。この分業が計算効率につながる、とリュウは説明する。
リュウの主張を受け、OpenAIの広報担当者はメールで、「計算需要が増大する中、Sora研究チームはロボティクスと現実世界の物理タスクを前進させるため、ワールドシミュレーション研究に再注力しています」と述べた。
コスト削減にとどまらず、Video Rebirthは重力、物体の衝突、照明など物理法則に従う動画を生成できる点でも際立つとリュウは言う。AI生成クリップでは物体が変形したり不気味さが出たりしがちな、業界の重要なボトルネックに切り込むものだという。さらに同社のAIは、Eコマースの広告主にとって最重要事項である製品の一貫性を維持するのが得意で、映画制作者向けには表情表現や風景ショットの生成にも優れるとリュウは付け加える。Hivenは3月のVideo Rebirthの資金調達発表で、韓国ドラマや映画を制作するエンタメ部門CJ ENMを含むCJの各事業で、同スタートアップとの協業を見込むとしていた。


