机上の計算では、Video Rebirthは資本集約型のAI動画戦場で競うには小さすぎる。創業から2年未満の同社は、資金調達額が8000万ドル(約129億円)、チームは30人。シンガポール本社と香港オフィスを拠点に運営している。最先端の動画モデルの学習に数千万ドルがかかり、運用にはさらに多額を要する領域で、Video Rebirthは本来なら競争から締め出されているはずだ。
それでも同社は、5月に主力モデルを一般公開する直前、テック大手と並んでベンチマークのランキングに名を連ねる枠をこじ開けた。Video Rebirthのプロフェッショナル向けAI映像エンジン「BACH」は、Artificial Analysisのテキストからの動画生成モデルの性能ランキングで6位に登場。アリババ、バイトダンス、快手科技(Kuaishou Technology)、xAIが開発したモデルの後塵を拝した。だがスタートアップ勢としては最上位であり、トップ10の中では動画生成1分あたりの価格が最も安い。
「この規模のチームにとって、私たちのアーキテクチャ上のアプローチが機能しているという強いシグナルでした」。Video Rebirthの共同創業者兼CEOである劉威(リュウ・ウェイ)はそう語る。
リュウによれば、AI動画エンジンの開発はまだ序章にすぎない。現実そっくりであるだけでなく、物理法則に縛られたビジュアルを生成できるようAIを学習させることで、超写実的な世界を生み出せるモデルの構築を目指す。これはGoogle、Meta、OpenAIといったテック巨人が追い求めるハイリスクな領域であり、自動運転やロボティクスからゲームに至るまで幅広い産業を破壊し得るとされる「ワールドモデル」を巡って競争が進む。
巨人たちを相手に、リュウは「本当に意味のある」ワールドモデルを構築しているという。周囲の環境を理解し、次に起こることをシミュレーションできるモデルだ。常識と直感に基づいて結果を予測する人間のように、である。「私たちはワールドモデルをつくるために動画生成をやっています」とリュウは言う。「3年以内に、物理世界がリアルタイムでシミュレーションできることを証明します」
この目標を達成するため、Video Rebirthは3月、評価額非公表で総額8000万ドルのシードラウンドをクローズした。投資家には、億万長者リサ・スーが率いる米国のAIチップ開発企業アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のベンチャー部門であるAMDベンチャーズ、億万長者チョン・ウィソン率いる韓国の自動車メーカー、現代自動車グループのベンチャー部門ZER01NE、億万長者イ・ジェヒョンに連なる韓国の食品・エンタメ複合企業CJグループ傘下の投資会社Hiven、韓国のゲーム開発会社アクトーズ・ソフト、上海拠点の啓明創投(Qiming Venture Partners)、そして億万長者グッドウィン・ガウが会長を務める香港拠点のプライベートエクイティファーム、ガウ・キャピタルが名を連ねた。
Video Rebirthは7月に新たなラウンドを調達するとしているが、詳細は明かしていない。
「私たちの投資根拠は、動画生成がコンテンツ制作の道具にとどまらず、ワールドモデルへ至る最も明確で実現可能性の高い経路の1つだという信念にあります」。ZER01NE傘下プログラムであるヒュンダイ・クレイドルのシニア投資マネジャー、ファン・ウェイはそう語る。「Video Rebirthは初日からまさにこのビジョンを共有しており、その技術はフィジカルAIにおける重要な将来用途を解き放つ位置付けにあります」



