国内外でマーケターが担う役割が変化するなか、米フォーブスの「世界で最も影響力のあるCMOリスト」には、どのような変化があるのだろうか。50人のCMOと殿堂入りの6人から、その傾向を紐解く。
偉大なチーフ・マーケターとは、どのような能力をもつ人で、どのような基準で測るべきか。米フォーブスの「世界で最も影響力のあるCMOリスト」は、2025年で13年目を迎えた。ブランドとビジネスに際立った影響力をもつ50人のCMO(最高マーケティング責任者)を表彰するものだ。
「影響力」は一言で言っても定義しにくく、正確に数値化するのは難しい。フォロワー数や「いいね」の数、あるいは表面的な発信力によって測られるある種の「人気」と混同されがちだ。
米フォーブスでは、影響力の本質・効果・測定方法の変化を考察するなかで、「影響力を測るうえで、インパクト以上のものはない」と考えるようになった。影響力の最終的な尺度はスポットライトではなく、CMOが事業とブランドにもたらす商業的インパクト、そして世界のマーケティング・コミュニティへの貢献にある。「他者──外部の『消費者』や『顧客』、そして社内の経営陣やチームメンバー──の態度と行動を変える能力」このことが最も重要であると確信している。
以上の考えをもとに米フォーブスではマーケティング分析ソフトウェアのSprinklr社と協力し、LinkedInからの補足データを活用しながら、1500人以上のCMOを候補者とし、20の代理指標、100億のデータポイントを分析することで、可視化・評価・理解が可能な指標を追求している。
分散化されるマーケティング
CMOの役割は進化を続けている。マーケティングの権限はますます分散、拡散、民主化され、かつてはトップダウンで流れていたものが、今やネットワーク化され、横断的、循環的、偏在的になっている。ブランド構築、時にブランド破壊は、企業内外のあらゆるステークホルダーが共同で行う営みとなっている。
こうした変化に加え、消費者感情の変動、テクノロジーの加速的進歩、地政学的な不安定、経済的不確実性、マーケティングの実務経験をもたないCEOやCFOの理解不足、文化的分断の課題が、CMOたちの前に立ちはだかる。
それらの課題に挑み、インパクトを創出しているのが、25年版「世界で最も影響力のあるCMOリスト」に選出された50人だ。リストには、短期的な話題づくりよりも長期的な文化共鳴を優先してニューバランスの文化的な存在感と商業的成果を高め、24年度の過去最高売上高(78 億ドル)を牽引した同社のグローバルブランドプレジデント兼CMOクリス・デイビス、生成AIビューティコンテンツラボ「CREAITECH」を立ち上げ、エヌビディアやグーグルとも提携関係を結び、これまでにない美容体験の実現を強化するロレアルグループのチーフ・デジタル&マーケティング・オフィサー、アスミタ・デュバイらが含まれている。
日本人で唯一選ばれたマイクロソフトのエグゼクティブ バイス プレジデント兼CMO沼本健は、東京大学法学部から通商産業省(現・経済産業省)に入省、その後米スタンフォード大学(MBA)に留学したキャリアをもつ。
同社の2700億ドル規模の事業におけるエンド・ツー・エンドのマーケティングを統括し、その職責は企業、デベロッパー、消費者すべての関係者に及び、分野横断的なメッセージの統一と、マイクロソフトテクノロジーの世界的な普及拡大を推進している。特に、同社の生成AIアシスタント「Copilot」デビュー以来、沼本はWord、Excel、Outlook、Windowsなどのコア製品へのCopilot展開を主導。イノベーションとインパクトを重視する沼本は、「Work Trend Index」や「Future of Work with AI」といったキャンペーンや、ペルーのリマで500人の公立学校教師がCopilotを活用するといった実世界の事例でそれを体現している。エージェント主導の働き方の未来においてマイクロソフトを中心的存在として位置付けることに貢献している。
彼ら50人のCMOと殿堂入りの6人は、担当企業をかたちづくり、業界の性格と行方を定め、そして完全には認識されないかたちで、世界そのものに影響を与えている。



