カギは「スタンス」への共感
──これからのAI時代を切り拓く人材を、いかに育てていますか。
北口:私は組織の根幹にあえて多様性を求めず、極端に言えば共通した価値観を持つ、いい意味での「クローン」のような人間が育つようにしていきたい。人の価値観を変えるのは至難の業ですが、私はあえてそこに注力しています。例えるなら、甲子園を目指す強豪校の野球部。全寮制で携帯を没収され、月1回のコンビニが至福の時間だったりします。外から「青春を犠牲にしている」と批判されても、彼らは本気で取り組む自分たちを「かっこいい」と信じている。当社も同様に「本気でやることがかっこいい」という価値観をつくっています。スタートアップなのに全員スーツで出社なんて今時珍しいですが、それを「かっこいい」と思う人が集まる環境にしているんです。「朱に交われば赤くなる」で、環境の力は絶大です。
また、過去に大量採用をして離職率が上がった反省から、社員の8割以上がカルチャーに共感した状態を保つようにしています。
三浦宗一郎(以下、三浦):HASSYADAI socialでは10代の若者と話す機会が多いのですが、「自分がかっこいいと思ったものを信じる」ことの大切さは、彼ら・彼女らの進路選択にもマッチしていると思います。数年前は「データサイエンティストになれば年収1000万円だ」とみんながその道に殺到したけれど、今や「AIに代替される仕事かも」と一変している。そんな先行きが不透明な時代だからこそ、“最適解”ではなく「自分がやりたかったから」と心で判断した進路こそ後悔が少ないんですよね。
未来のリーダーは、いかに偶然性に身を委ね、その先を突破できるかという力が大事になってくると思います。その偶然性は固定された場所ではなく、物理的に移動した先での出会いから生まれるもの。だから僕たちは「ヤンキーインターン」(18~29歳の困難な状況にある若者を対象に行っているインターンシップ)や「18歳の成人式」などで若者を教室の外へ出し、出会うはずのない大人に遭遇させているんです。社会全体の偶然性を高め、意図的に「バグ」をつくることが重要だと考えています。


