需要はすでに供給を上回っている
これは机上の優位性ではない。需要は具体的で、かつ切迫している。同社のAIチップ「トレイニアム2」はすでに「ほぼ完売」だ。出荷が始まったばかりの後継機「トレイニアム3」も「ほぼ予約で埋まっている」。とりわけ注目すべきは、「広く出回るまでまだ約18か月を要するトレイニアム4についても、その大部分がすでに予約済みだ」とアマゾンが報告している点である。
AI構想を進めるため「数千万単位のグラビトン・コアを使う」
提供開始まで1年半も先のハードウェアを顧客が押さえているという事実は、アマゾンが示す独自の価格性能比に、それだけ強い需要があることを物語っている。しかも顧客はAIスタートアップにとどまらない。テック大手のメタ(Meta)は最近、自社のAI構想を進めるために「数千万単位のグラビトン・コアを使う」と確約した。他の選択肢より最大「40%優れた価格性能」を実現するアマゾンの独自CPUをメタは選んだのだ。
これは支出への懸念にどう答えるのか?
ここが要点だ。アマゾンに弱気な投資家は、AI拡大にかかる巨額のコストを根拠にしている。しかし、自社でチップを作れば、その投資にかかるコストの仕組みが根本から変わる。経営陣はその利点をはっきり語っており、規模が大きくなれば、トレイニアムによって「毎年数百億ドル(数兆円)の設備投資を節約できる」と見込んでいる。
強固な競争優位にもつながる
コストを抑えられるだけではない。これは強固な競争優位にもつながる。同社は、自社開発のシリコンを使えば「外部のチップに頼る場合と比べて、営業利益率を数百ベーシスポイント(1ベーシスポイントは0.01%)押し上げられる」と予測している。年間売上高が現状ペースで1500億ドル(約24.3兆円)に達するAWSほどの大規模事業では、これだけ利益率が改善すれば、利益を押し上げる強力な原動力になる。
投資家が設備投資の1ドル単位まで細かく精査してきた一方で、アマゾンはその資本の効率を大きく高めうる技術そのものを開発してきた。これは、市場が最も気にかけている問いへの答えになる。つまりアマゾンは、AI革命にただ乗るだけの段階を超え、その革命を今後何年も支え続けるための、高収益の土台となるエンジンを築きつつあるのだ。
このような好機は、まずどこに現れるのか?
こうした好機は、財務の数値に表れて初めて意味を持つ。その最初の具体的なサインが、経営陣の業績見通しだ。新たな収益を実際に見込めるようになれば、企業は予想を上方修正する。そしてその上方修正を市場がすでに好感し、買いを入れている──これこそ、こうした筋書きが現実になりつつあることを示す、最も明確な証拠の1つだ。


