急拡大するAI事業と約30.59兆円の設備投資、利益は見合うか
この緊張がどこから来ているのかは、同社自身の戦略を見ればわかる。一方には、急速な事業拡大がある。経営陣は最近、自社の「AI事業は年間経常収益(ARR、契約から毎年見込める売上高)で370億ドル(約5.96兆円)を超え、123%伸びた」こと、そしてマイクロソフト・クラウドの売上高が540億ドル(約8.69兆円)を上回り、前年同期比で29%増えたことを強調した。さらに同社は今、「Microsoft 365 Copilotの有料シート数(利用契約数)が2000万を超えた」と誇る。
こうした好調ぶりは、株価を先ほどの値幅の上限へと押し上げる力になりうる。市場の雰囲気についても一言添えておくと、オプション取引のトレーダーは今、値下がりに備えるプット(売る権利)よりも、値上がりに賭けるコール(買う権利)に高いお金を払っている。
しかし、その成長にはかなりのコストがついて回る。議論のもう一方の柱は、その拡大を支えるためにいくら投じる必要があるか、という点だ。経営陣は直近の決算説明会で、2026年に「設備投資としておよそ1900億ドル(約30.59兆円)を投じる見通しだ」と述べた。この金額をめぐって、あるアナリストは、売上高の伸びに比べて設備投資が膨らむ速さが速すぎる、と指摘し、それが「投資家をいくらか不安にさせる食い違い」を生んでいると語った。煎じ詰めれば、問われているのは、AIから返ってくる利益がこれほどの支出に見合うのかどうかである。別のアナリストが「企業のIT支出全体は今後も増える見込みがない」と指摘しているだけに、なおさら重い問いだ。
予測に頼らず分散で備え、2027年の増収増益を注視する
急速な成長と巨額のコスト、このどちらが株価をより大きく動かすかを、あなたが選ぶことはできない。あなたにコントロールできるのは、この不確実性にどれだけ身をさらすか、その度合いだけである。これほど大きな値動きが見込まれる株を持つなら、当てずっぽうの予測ではなく、規律あるやり方で資産配分を管理する必要がある。つまり、1つの銘柄にいくらまで賭けるか(ポジションの大きさ)を決め、投資先を分散させることが、それだけ大事になってくるということだ。
株主として何より見ておくべきは、売上高がこれから伸びていく話が、膨らむ設備投資との兼ね合いでどう展開するかだ。経営陣は「2027会計年度も、売上高と営業利益がそろって2桁伸びる年になると見込んでいる」と語っている。同社がこの約束を本当に果たせるのか、そしてどれだけ利益を出せるのか──それが、今あなたの株に織り込まれている大きな不確実性を解きほぐす決め手になるだろう。


