ホルムズ海峡は一時的に再開された。その一方で、海上貿易に対する長期的な脅威が増大している。米国の制裁を無視し、海底ケーブルを無差別に破壊する老朽化したタンカーや貨物船から成る「影の船団」は、世界の貿易とデータ通信を妨害している。ロシアと中国は国際法の抜け穴を悪用し、これらの船舶を用いて、表向きは関与を否定できる形で海底ケーブルを切断している。法を順守する国々は影の船団を阻止し、海底ケーブルや国境を越えたデータ通信を保護するための法的・技術的な枠組みについて合意しなければならない。
近年多発する海底ケーブル切断
影の船団は制裁を回避し、違法行為を行う、老朽化が進んだタンカーで構成される。タンカーの所有者を隠すために、偽旗を掲げていることも多い。活動の特徴としては、船舶自動識別装置(AIS)の信号遮断や虚偽の位置情報の送信、船舶間での貨物の積み替え、便宜置籍、頻繁な船籍変更や船名変更などが挙げられる。中国は国有船団の漁船でも同様の手法を用いている。
影の船団は、バルト海や台湾近海で近年たびたび発生している海底ケーブル切断への関与が疑われている。2023年10月、香港船籍で中国所有の船舶「ニューニュー・ポーラーベア号」は、バルト海で100海里以上にわたっていかりを引きずり、フィンランドとエストニアを結ぶ天然ガスパイプラインとデータケーブルを損傷させた後、ロシアの港に寄港した。これについて中国は、暴風雨による事故だと主張している。2024年11月には、中国船籍のばら積み貨物船「伊鵬3号」がいかりを引きずり、バルト海の海底ケーブル2本を切断した。同船のロシア人船長は自国の情報機関の指示に従って行動したとみられ、ロシア海軍のコルベット艦が偵察を行っていたとされている。2025年初頭、ベリーズ船籍でロシアが運航する「ワシリー・シュクシン号」が約4週間にわたり、台湾近海を徘徊していた。これと時を同じくして、カメルーン船籍で中国人乗組員を乗せた「順興39号」が、台湾沖で海底ケーブルを切断した。順興39号は最大6つのAIS識別番号と2つの船名を使用していた。フランス当局は最近、少なくとも5隻のロシアの影の船団の船舶を拿捕(だほ)したが、法的な抜け穴により起訴に向けた取り組みは妨げられている。
国際法の抜け穴を悪用するロシアと中国
北大西洋条約機構(NATO)加盟国は影の船団に対処しようとしているが、この努力は国際法の抜け穴によって妨げられている。2024年のクリスマス当日、ロシアの影の船団に関連するとされるクック諸島船籍の「イーグルS号」は、フィンランドとエストニアを結ぶ海底電力ケーブルを切断し、フィンランドの排他的経済水域(EEZ)内で4本のデータケーブルに損傷を与えた。これを巡り、エストニアは国連海洋法条約を「国際水域内の船舶は調査対象外」であると解釈し、調査も立ち入り検査も行わなかった。一方、フィンランドは同船舶を自国の領海内に招き入れ、立ち入り検査を実施した。同国の裁判所は後に、ケーブル切断はフィンランドの領海外で発生したものであるため、立ち入り検査は不当だったとの判断を下した。本件は現在、控訴審で争われている。



