実際、各国は影の船団を抑制するための協力措置を講じることができる。米財務省が2025年1月に183隻の石油タンカーを制裁対象に指定したことに加え、英国や欧州連合(EU)の措置も相まって、同年3月までにバルト海沿岸のターミナルにおける影の船団の積載量は劇減した。しかしその後、ロシアは対策を講じた。各国はまた、金融情報を用いて旗国への支払いを追跡し、保険会社や金融機関に対してリスクを明らかにするとともに、AISを改ざんする船舶に対しては迅速な船籍剥奪を推進することで、便宜置籍による不正を阻止することもできる。外交面では、各国は旗国に対し、オンラインで検証可能な船籍登録簿の作成を働きかけることが可能だ。英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)が先ごろ開催したアジア安全保障会議では、17カ国による「水中設備の防衛協力に関する指針」が発表された。これは、海底ケーブルの安全を共同で確保するための枠組みだ。
官民が一体となって影の船団に対処する方法
各国は民間企業と緊密に連携し、影の船団に対する対策を講じることができる。ケーブル事業者やクラウド大手は既に自社の設備の異常を検知している。官民が協力すれば、その情報を権限者に伝達するための仕組みを構築することができる。政府と民間企業は、影の船団の動向を追跡する衛星画像や海上領域認識情報を共有することも可能だ。違反行為や損失を定量化し、公開船舶データベースを構築することで、民間企業や個人が影の船団の船舶とその背後にいる国家を名指しで非難できるようにする。さらに、主要なケーブルコンソーシアムごとにセキュリティー担当者を配置し、共通の不審活動判定基準を設定し、海底ケーブルの保護を目的としたNATOの「バルト海監視作戦」と「北欧警備作戦」にリアルタイムで直接情報を提供する仕組みを構築することも可能だ。
恐らく、米国とその同盟国にとって最も強力な法的手段は、影の船団への保険適用を除外することだろう。ロシアの影の船団の保険契約の大半は欧州経由で結ばれている。世界の再保険の大部分は米国か欧州を経由している。各国は、NATOのバルト海監視作戦と北欧警備作戦から提供される情報を基に、AIS操作歴などの法違反がある船舶の統一されたリアルタイムのブラックリストを作成するよう、国際的な船主責任相互保険組合に働きかけることができる。保険適用を打ち切れば、影の船団の市場への参入は遮断される。法の範囲が及ばないことは、市場が実行に移すだろう。
海底ケーブルは、インターネット、金融取引、軍事通信など、国際データの99%を伝送している。中国とロシアは国際法の抜け穴を悪用し、海底ケーブルを妨害するために影の船団を活用してきた。こうした抜け穴をふさぐには、国際法が許容する範囲についての共通認識と、説明責任の仕組みの構築に向けた制度的な勇気が求められる。世界の商業の安全は危機に瀕している。


