半議院内閣制が機能する日本
経済学101 : 高宮先生は、日本ではポピュリズムが抑制されており、それは参議院の働きによるところが大きいと論じられていますが、この点を簡単に説明していただけますか?
高宮:この点を論じるにあたって、まずガングホーフの「半議院内閣制」 (semi-parliamentarism) について説明したいと思います (詳細は『中央公論』2026年5月号への寄稿論文を参照) 。
半議院内閣制は先述の『大統領制と議院内閣制を超えて』で示された議院内閣制の「亜種」です。特徴は二院制の制度設計にあります。有権者が直接議員を選ぶ第二院が、法案成立に対して強い拒否権を持つ一方、内閣不信任を通じて政権までは変えることができない体制がこれに該当します。また、小選挙区制の下院と比例代表制の上院の組み合わせが想定されており、該当国として、日本とオーストラリアが挙げられます。
この半議院内閣制では、小選挙区主体の下院が政権選択選挙として機能し、有権者の負託を受けた強い首相が生み出されます。一方で、比例的な上院では、与党がしばしば過半数割れを起こし、上院の一部野党と立法で柔軟に協力します。第二院では野党が内閣不信任案を提出できないため、上院の野党、特に小政党は政権転覆よりも政策実現を優先し、与党と是々非々で対峠します。
そして、日本では比例的な選挙制度の参議院でポピュリズムを敢えて取り込み、その主張を政策に一部反映することで、国民の不満を解消したり、ポピュリズム政党を穏健することができたりすると考えています。
例えば、2025年参院選で参政党が伸びたことで、自民党政権は外国人政策に対する国民の不満に気づき、ある程度穏健な形で厳格化しました。また、国民民主党が現役世代・若年層を代弁する形で主張した「103万円の壁」打破も高市政権は要求を呑みました。ここでは所得制限を設けるなど、財政にも一定の配慮をしており、穏健な形で政策化しています。
もしイギリスに日本のような公選かつ比例的な第二院があれば、ファラージらが早い段階で第二院に進出し、政府はEUを離脱することなく、移民政策を厳格化できたかもしれません。その意味で、参議院は新たな世論の所在に気づかせてくれたり、多様な勢力を取り込み社会のエリート批判を弱める効果があります。


