『世界』1000号に寄稿した論文で書きましたが、かつてオリックスとブルーウェーブが合併した後、ファンが悲しんで10年以上人気・成績が低迷したことがありました。安易に合流するとファンが離れるため、政党もそれを恐れて簡単には与党入りしないように思われます。
加えて、ネット地盤があれば、ファンが一定の党勢を維持してくれるため、与党に吸収されにくくなります。さらに推し活政党はエッジの効いた党首がいることが多く、そのような党首は他党と合流して埋没することを恐れます。
また、対象がインディーズである方が「推し活」は楽しいので、少数派で自由に動き回って注目を浴び続けることが、「ネット地盤」に支えられた政党にとって、最適解となるのです。あと国民民主の玉木雄一郎代表が典型ですが、与党に裏切られたり、うまくいかなかったりするほうが、ファンは心を動かされ、よりのめり込む側面さえあります。 推しの涙にファンも涙するのです 。だからこそ、イソップ童話の「コウモリ」のような、どっちつかずの状態が政界で維持できるのです。この宙ぶらりん状態は、敵と味方を峻別する政治では本来難しいことです。
もう一つ、ネット選挙以外の要因として「歴史の教訓」があります。 豪州では1975年に深刻なねじれ国会に陥って首相が何もできなくなり、「総督」(イギリスの植民地時代の名残で、日本の天皇みたいな形式的権力者)が首相を罷免するという事件がありました。 それが国民的なトラウマとなり、豪政界では「ねじれ国会はほどほどにしよう(建設的な調停をしよう)」という規範が生まれました。
日本においては、2007年以降のねじれ国会の教訓に加えて、民主党政権の失敗が歴史の教訓として機能しています。民主党政権が失敗したことで、野党は「対決より解決」「是々非々」「ゆ党(よ党でもや党でもない)」と称して、与党と協調する規範が生まれました。 このように「付かず離れず」という、半議院内閣制を維持する規範が広がっているため、予想以上に長く続くのではないかと見ています。


