Forbes JAPAN 2026年8月号の第3特集は、日本でも新たな動きが起きているフィランソロピーに注目した「『インパクトフィランソロピー』時代」特集。今、世界、日本で起きているフィランソロピー新潮流では何が起きているのか。これまでも特集をしてきた、日本で起きている「起業家×フィランソロピー」の新たな動きにも探る特集だ。
構造的な社会変革のため、資金提供に加えて行動を続けている。すべては「より良い社会を残したい」という思いからだ。
「フィランソロピーという概念に、上場が見えてきた2022年に出合った。政治家志望だった私が起業家になったのも企業経営を通して『社会を良くしていきたい』という思いから。資本主義の枠組みでは解決できない課題に取り組みたいと始めた」
ナイル代表取締役社長の高橋飛翔が今、取り組んでいるのは、ふたつのプロジェクトだ。「ひとつは若手首長への支援とその誕生への支援だ。40代以下の首長は、子育て支援や将来のインフラ投資など次世代の投資に積極的であるという研究がある」(高橋)。全国の自治体首長が集い、地域課題の解決や首長同士の知見共有・政策連携を議論するコミュニティ「パブリック・リーダーズ」を23年に立ち上げた。福岡市長の高島宗一郎、千葉県知事の熊谷俊人、つくば市長の五十嵐立青らを特別講師に迎え、全国の若手を中心とした約40人の首長がコミュニティに参加し、年に複数回勉強会を行っている。首長を目指す若い世代の育成も視野に入れている。
もうひとつがソーシャルセクターに流れる資金を増やすための支援だ。「個人でもNPOに寄付しているが、それだけでは難しい構造的な課題があることにも気づいた」。高橋は現在、経済同友会「共助資本主義の実現委員会」副委員長に就任し、コーポレートガバナンス・コードの改訂、会社法改正、寄付金税制の拡充などに関する政策提言に主体的に関与。制度改革による構造自体の変革を目指している。現在、日本の寄付金は2.1兆円でGDPの0.4%にとどまり、米国(93.5兆円、GDP比2.0%)のGDP比で5分の1の規模だ。絶対的な資金量が課題だ。
「個人の寄付文化の醸成だけでは限界がある。一方で、24年末時点の企業の利益剰余金は638兆円、企業が保有する自己株式は42兆円だ。この企業の蓄えた資金が適切な理由をもってソーシャルセクターに流れ込む構造がつくれれば、数千億円規模の寄付に匹敵するインパクトを出せるのではないか、という問題意識から政策提言している」
高橋にとって、フィランソロピーの活動は、企業経営者として目指すミッションともリンクしている。「『より良い社会を後世に伝えていく、残していく』が人生のミッション。そのためのアプローチの中心に事業があり、フィランソロピー活動もあります。ただ、目的はひとつです」
高橋飛翔◎ナイル代表取締役社長。東京大学法学部在学中の2007年にナイルを創業。23年12月、東証グロース市場に上場。「幸せを、後世に。」をミッションに、巨大産業の変革に取り組む。1985年生まれ。



