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起業家

2026.07.03 16:30

kubell山本正喜が実践する寄付。KGIは「政策提言による社会的インパクト」

山本正喜|kubell 代表取締役 CEO

山本正喜|kubell 代表取締役 CEO

Forbes JAPAN 2026年8月号の第3特集は、日本でも新たな動きが起きているフィランソロピーに注目した「『インパクトフィランソロピー』時代」特集。今、世界、日本で起きているフィランソロピー新潮流では何が起きているのか。これまでも特集をしてきた、日本で起きている「起業家×フィランソロピー」の新たな動きにも探る特集だ。

シンプルな寄付とは違い社会的インパクトを重視する上場会社経営者が行う新しいフィランソロピーとは。


「正直あんまり表に出たくはなかったんですよ。でも、次につながる人が出てくるかもしれないと始めたんです」

そう話す、kubell代表取締役CEOの山本正喜が自身の名前を付けた「山本正喜ポリシー基金」を設立したのは2023年。19年のIPO(新規株式公開)以降、エンジェル投資を続けてきた山本。きっかけは、そのエンジェル投資先の一社・PoliPoli代表取締役CEOの伊藤和真がもちかけた、政策を軸にした社会課題解決のための基金「Policy Fund」構想だ。NPOやルールメイカーへ政策共創活動のための寄付を行い、社会課題解決に向けて新しい国のルールや予算整備のための政策提言活動に取り組んでもらう。「政策のベンチャーキャピタル」を掲げるこの仕組みに即決で賛同した。

「寄付というよりもエンジェル投資に近い感覚ですね。支援先のNPOの代表も、スタートアップ起業家と同じ軸で見ています。いかに社会の仕組みそのものを変えるか」

教育、少子化、地方創生、貧困、女性活躍をテーマに8団体へ寄付しているが、その手法もユニークだ。活動内容や目指す社会像についてピッチを受けて支援する団体を選出。一部を寄付し、中間報告で成果を見たうえで、残りも寄付するという段階的なアプローチを行う。その後、成果が出た団体にはさらに寄付するというケースも出てきている。スタートアップへの追加投資と同様の発想だ。支援先には報告の責任が生まれ、山本は成果を見ながら寄付の判断ができる。

手本にしたのは、成果を測る指標を定め、データを検証しながら助成先と向き合うビル&メリンダ・ゲイツ財団の「アウトカム投資」の考え方だ。今、山本が掲げるKGI(重要目標達成指数)は、新しいルールや予算の整備、受益者が享受する社会的インパクト。社会がどれだけ動いたか──だ。支援先のひとつである認定NPO法人D×Pは24年12月、大阪市と大阪ミナミの繁華街(グリ下)に集まる若者に関するアンケートについての連携協定を締結するなど成功事例も出てきている。

山本が今もくろむのは長期視点からの社会課題解決だ。個人としての寄付だけではなく、次に続く起業家たちやNPO、政治家を巻き込んだ「好循環の仕組み化」だ。「フィランソロピー・エコシステムができれば、社会的インパクトを重視した資金循環モデルができる。10年以上かかるかもしれないが、その種まきをしていきたい」


山本正喜◎kubell代表取締役CEO。2000年大学在学中に兄弟で創業(当時 EC studio)し、CTO就 任。18年6月から現職。19年9月、東証マザーズ(現グロース)市場へ上場。23年、「山本正喜ポリシー基金」設立。

文=加藤智朗 写真=ヤン・ブース

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