岡山県の南西部、瀬戸内海に面した人口3万人余りの小さな街、浅口市鴨方町。ここに、1953年の創業以来、乾麺の結束装置というニッチな領域に特化しながら、国内トップシェアを誇る技術を育んできた町工場がある。
カワカミという会社だ。銀行員から後を継ぎ、家業へ飛び込んだ3代目アトツギの川上善大は、革新的な取り組みを続け、世界市場への挑戦にも足を踏み入れた。
ロボット導入、学生との共創、多様な人材の受け入れ──この町工場が描く「100年企業」への道筋には、現代製造業が直面する課題と、それを突破するヒントが詰まっている。筆者が瀬戸内VCと手掛ける、ローカルスタートアップとアトツギの専門番組「セトフラ」をもとにお伝えしたい。
技術のコア “メカで作る”という不変の強み

カワカミの強みは、モーターやエアシリンダーといったアクチュエーターを多用する近代的構成ではなく、「チェーン」「リンク」「メカニカル機構」で構成された機械設計にある。善大氏は、「創業から変わらないこの構造」が、壊れにくく、使う方が現状を理解しやすく、結果的にはお客様から信頼を得てきたと語る。
この「守りの強さ」が土台となり、海外展開・自動化・多様性戦略という「攻め」のフェーズへと踏み出す原動力になっている。
「パスタ王国」欧州市場への挑戦

乾麺といえば日本国内市場での需要も堅調だが、カワカミはさらに一歩踏み出した。世界有数の小麦生産国であり、パスタ文化も浸透している欧州市場に向け、まもなく同社の結束機が導入される予定である。
「結束機の国内トップという実績が、世界でも通用するという証明になる」と善大氏。もはや町工場の枠を超え、「世界の工場」へ名乗りを上げる段階にあると言える。 (セトフラの密着取材は、下記のYouTubeへ)
若手・学生との共創 機械ד学び”の場をつくる
工場を訪れた取材班が気づいたのは、「若い社員が多い」こと。そして、近隣大学の学生起業家たちと「ものづくり」を共に進める姿であった。社会人としての経験が少ない彼らが、設計会議やロボット導入の現場に参加する機会を与えられている。「学生にとってはチャンスの場、我が社にとっては学びの場」と川上は言う。製造現場が静的な“作業場”ではなく、リ・イノベーションの“フィールド”として機能している。



