創業35年、大津高志氏がオーナーシェフを務めるフレンチレストラン、「Ohtsu」。水戸駅から徒歩15分の閑静な地で、街路樹を見下ろしながらゆったりした店内で美味しいものに舌鼓を打つ、何とも心地よい良いレストランだ。
聞けば大津氏はどこで修業したこともなく、食べることが好きでマダムと様々な店を食べ歩き、書籍などから独学で学び、少しずつ形にしていったというから驚く。
その店が先日、今年で6年目を迎えるジャパンタイムスのアワード「The Japan Times Destination Restaurants」に選ばれた。毎年10軒ずつ、訪れる価値のある地方のファインダイニングを選出するものだ。
大津氏は7年ほど日立市でブラッスリーのようなカジュアルな店をやった後に、息子が生まれたのを機に現在の場所に移って35年。現在はその息子の高彬氏も加わって、家族経営の店として営んでいる。高彬氏もどこでも修業を積まず、父の見よう見まねで実力をつけた。実は2022年に若手シェフの登竜門ともなっている「RED U-35」を受賞している。

開店後は長らく、お客様に美味しい物を食べて喜んでもらえればと日本中の名立たる食材を取り寄せて料理をするスタイルを続けてきた。
それが5年程前に、テレビ朝日の「食彩の王国」に出演したのをきっかけに生産者である漁師さんと深く行き来するようになり、それ以来地元、茨城の素材に特化し、一つ一つを深堀りするスタイルに変化。今は、生産者との二人三脚で、素材がぐっと前に出て、その魅力を訴えかける料理を出している。
「料理は厨房からではなく、獲った魚をどのように締め、素材として仕立てていくかというところから始まっているんです。だから絶対に自分たちだけでは料理はできない。生産者の手と知恵を全面的に借りて、初めて完成することができる。魚種や漁法により、魚の締め方を変えたりしながら、鮮度を生かす仕立てにすることで、この地で食べる意味のある料理になると思うのです」と高彬氏。
漁師さんが仕立ててくれた魚にフィードバックをすることで、だんだん好みの食材に仕上がっていくようになるという。
そうして生産者との距離が近くなって、素材からのインスピレーションをもらえるようになると、本を読んだり、食べに行くだけではできない、オリジナルの料理が作れるようになる。確かに、店でいただいた鯛のカルパッチョにサザエの出汁をかけた一皿は、他の料理店では感じたことのない、引き込まれるような旨みがあった。



