そうした深い付き合いをする漁師が現在二人。それぞれに獲れた素材で研究を重ねる。
例えば、石投(いしなぎ)という、肝臓に毒がたまりやすい魚がある。大きなものでは100kgを超えるものもあり、身はすごく美味しいのだが、そもそも獲れる量が少ない。
「Ohtsu」では、そうした知られざる美味を紹介しないのはもったいないと、一品料理として供している。さっと蛤のスープの中でしゃぶしゃぶ仕立てにしたその身質の独特で美味しかったことと言えば忘れられない。
とはいえ、ただ地産地消の食材を出せばいいというものではないというのも「Ohtsu」の考え方だ。
「生産者が誇りを持って仕立ててくれた素材を自分たちのところで失敗しては、彼らにも恥をかかせることになる。彼らからバトンをきちんと受け取り、皿の上に彼らの想いも載せて出したいと」と高彬氏は言う。それができているのも、オーナーシェフとマダムが30年にわたって美味しいものを供し続け、生産者に対して築いてきた確かな信頼があるからにほかならない。
また、海の魚はもちろん、山の魚にも力を入れている。子どもの頃から山の中に入って勘を鍛えてきたという“山の漁師”ともまさに二人三脚だ。天然の鰻や鮎、山菜やキノコなど、山の幸を知り尽くしている。
まだ「Ohtsu」でもお目にかかっていないそうだが、新しい川の魚が見つかったという情報がその山の漁師から入ってきている。もし手に入ったらどう新しい料理を考えるのか。「漁師と締め方から一緒に研究し、一級の素材に仕立ててからですね。それから火入れをどうするか、どのような素材と合わせるかなどを考えていきます」と高彬氏。
そこで父の高志氏が口をはさんだ。「どのようにアレンジしようとも、最終的に何を食べているのかわかるような仕上げにしなければなりません」と。まさにそれが「Ohtsu」の目指すところなのである。海の素材と山の素材をバトンをつなぎながら出し,お客様には茨城を旅しているような気持ちになってもらえれば嬉しいと話す。


