宇宙

2025.11.13 11:30

「X5.1」太陽フレアで大規模な磁気嵐、地上で宇宙線量の増加を観測 各地でオーロラも

太陽フレアの熱画像。米航空宇宙局(NASA)作成(Heritage Space/Heritage Images/Getty Images)

太陽フレアの熱画像。米航空宇宙局(NASA)作成(Heritage Space/Heritage Images/Getty Images)

ここ1年余で最も強力な「X5.1クラス」の太陽フレア(太陽面での大規模な爆発現象)が2025年11月11日に発生し、北米をはじめ世界中に深刻な磁気嵐を引き起こしている。この現象は12日(日本時間13日)も続く見通しだが、今回の太陽フレアは非常に珍しい「GroundLevel Event(GLE)」と呼ばれる地上での宇宙線量の増加ももたらした。GLEが観測されたのは史上77回目となる。

地球周回衛星が今回観測したX5.1クラスの太陽フレアは、2024年10月3日に世界的なオーロラを引き起こしたフレア以来最も強いものだ。今年に入ってからは5月14日に観測されたX2.7が最大だったが、今回の規模はそれを大きく上回る。

今回の太陽フレアは、太陽面でも特に活動が活発な太陽黒点が地球を向いている状況で、X1クラスの太陽フレアが1週間続いた後に発生した。太陽から大量のプラズマ(荷電粒子を含むガス)が突発的に放出される「コロナ質量放出(CME)」が連続して起こり、後から発生した速いCMEが先に発生した遅いCMEに追いついて衝突・合体する「共食い型CME(Cannibal CME)」と呼ばれる現象が生じて、11~12日の夜間に地球大気圏に到達すると予測されていた。

太陽フレアは強力なエネルギー爆発で、米航空宇宙局(NASA)は無線通信、電力網、GPSなどの航法システムに影響が出るほか、人工衛星や宇宙飛行士にも危険をもたらす恐れがあると警告している。

太陽フレアの発生原因は、太陽の黒点の磁場がねじれて蓄積された磁気エネルギーが急激に解放されることだ。黒点は太陽表面の低温の領域で、太陽内部から磁力線の束(磁束管)が浮上して形成される。

11日の太陽フレアは、電波障害に加えて、通常は大気によって遮られる太陽の高エネルギー粒子が地表に到達し、珍しいGLEが観測された。

GLE:まれな現象だが現太陽周期では4回目

今回のX5.1クラスの太陽フレアは、亜光速の高エネルギー粒子によって引き起こされる太陽放射嵐(太陽嵐)ももたらした。

米コロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理研究所(LASP)の太陽物理学者ライアン・フレンチ博士は「たいていの場合、これらの粒子は大気圏で吸収されて地上までは到達しない」「しかし、11日のフレアでは地上線量の増加、いわゆるGLEが観測された。つまり、粒子が地上に到達したのだ」と説明している。

宇宙が人類に及ぼす危険に関する著書のあるフレンチ博士によると、GLEはまれな現象で、1942年の観測開始以来、今回で77回目となる。現在の太陽周期では4回目で、これもまた珍しいことだ。ほとんどの太陽活動周期で、GLEは1~2回しか発生しないという。

次ページ > 太陽活動第25周期「二重のピーク」はあるのか

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事