トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーが、AI導入を企業や政府に橋渡しする新会社を立ち上げた。米国では、生成AIの急速な普及に経営現場が追いつけず、導入プロジェクトの大半が失敗に終わる傾向にある。こうした混乱はボストン・コンサルティング・グループやマッキンゼーなど大手コンサルに巨額の利益をもたらしており、AIを「どう活用するか」が米企業にとって喫緊の課題になっている。クシュナーの新会社Brain(ブレイン)は、OpenAIとの提携や著名投資家からの出資を武器に、この課題に正面から切り込もうとしている。
クシュナーがAI導入難に挑む新会社Brainを設立
ここ最近、AI分野で最も活発な投資家の1人に浮上しているのが、OpenAIやDatabricks、Andurilに巨額投資を行うスライブ・キャピタルのジョシュ・クシュナーだ。その兄であるジャレッド・クシュナーも今回AIスタートアップを共同創業し、この分野に参入した。
シリーズAで約45億円を調達、著名投資家が集結
クシュナーは、テック投資家のエラッド・ギル、元メキシコ外相のルイス・ビデガライと共に、Brainを2024年に設立した。サンフランシスコを拠点に、大企業や政府機関がAIを導入し業務を改善することを支援している。また同社は9月10日、ステルスモードを脱し、シリーズAラウンドで3000万ドル(約45億円)を調達したと発表した。このラウンドは、クシュナーのプライベートエクイティ(PE)企業アフィニティ・パートナーズ、ギルのギル・キャピタルが主導した。
Brainはまた、コインベース共同創業者兼CEOのブライアン・アームストロングやストライプ共同創業者兼CEOのパトリック・コリソン、リンクトイン共同創業者のリード・ホフマン、パロアルトネットワークスの会長兼CEOニケシュ・アローラといったビリオネア投資家の支援も受けている。
OpenAIと提携、フォーブス「グローバル2000」の大手企業10社と契約
Brainは、約40人を雇用。OpenAIとの戦略的パートナーシップを通じて、フォーブスの「グローバル2000」に掲載された世界最大級の公開企業10社を含む顧客向けにアプリケーションを構築している。すでにビリオネアのパトリック・ドラヒが所有する競売大手サザビーズやPE大手ウォーバーグ・ピンカスとも契約を結び、複数の政府機関やエネルギー企業、医療システム、ホテル、レストランチェーンなどを顧客としている。
ギルとCEOのクレメンス・メワルトはフォーブスのインタビューで、Brainが今後、OpenAI以外のAIラボとの提携も視野に入れており、「複数の基盤モデルを活用していく予定だ」と語った。
米国で常態化するAI導入失敗、MIT調査で95%が成果を出せず
AIの急速な進化に、多くの企業や業界は対応しきれずにいる。マサチューセッツ工科大学(MIT)の最近の調査では、生成AIの実証実験プログラムを導入した数十社のうち、95%が成果を上げられなかったことが示された。
コンサル大手が混乱を収益源に変える構図
そして、このような難題が、「AIをどう実務に組み込むか」を企業に指導する役割を担うボストン・コンサルティング・グループ(BCG)や、アクセンチュア、マッキンゼーなどの経営コンサルティング大手の業績を押し上げている。



