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2025.06.29 10:00

世界で進む「富の移転」 富裕層に一番人気はUAE、流出著しいのは英国と中国 

富裕層の避難先として人気のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Shutterstock.com)

富裕層の避難先として人気のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Shutterstock.com)

世界では今、近代史上最大規模の民間資本の移転が起きている。新たな調査から、世界の億万長者の多くはアラブ首長国連邦(UAE)と米国に流入している一方、英国と中国からは多くの富裕層が流出していることが示された。

英コンサルティング企業ヘンリー&パートナーズがこのほど発表した富の移転に関する報告書によると、投資可能資産が100万ドル(約1億4500万円)以上と定義される富裕層(HNWI)のうち、過去最高となる14万2000人が今年、外国で居住権や市民権を取得することが明らかになった。2026年には16万5000人に達すると見込まれている。

投資移民に関するコンサルティングを手がけるエーペックス・キャピタル・パートナーズの創業者ヌリ・カッツはフォーブスの取材に対し「100万ドルの流動資産、つまり銀行預金を持つには、一般的に資産総額が1000万ドル(約14億5000万円)近く必要だ」と述べた。

ヘンリーの報告書によると、富裕層の避難先として最も人気があるのはUAEで、今年中に9800人の富裕層が同国で居住権を取得すると予測されている。2024年には6700人だった。

最も急速な伸びを見せているのはサウジアラビアで、今年は2400人以上の富裕層が流入すると見込まれている。これは、サウジアラビア国民の帰国のほか、首都リヤドや第2の都市ジッダに移住する外国人投資家の急増によるもので、昨年の8倍の増加となる。

これとは対照的に、英国は記録上最大規模となる富裕層の流出に直面している。ヘンリーは今年1万6500人の英国人富裕層が外国の居住権を取得するとみている。2番目に大規模な流出が予測されているのは中国で、今年中に7800人の富裕層が他国で居住権を得るとされた。

なぜ富の移転が重要なのか?

ヘンリーの報告書は「各国が人材だけでなく、それに伴う富を巡って争っているのは、経済的影響力の大転換が懸かっているからだ」と説明。「UAEにある総投資可能資産は約630億ドル(約9兆1100億円)と推定され、包括的な政策革新を通じて、同国は中東地域の中心地から世界的な富の中心地へと進化した」と述べた。

一方で報告書は、2016年以前は富裕層の流出より流入が上回っていた英国を、警戒すべき事例として取り上げている。だが、カッツは「移住」という言葉は誤解を招きかねないと指摘する。「私の経験から言うと、富裕層は投資移住制度を『選択肢の1つ』として利用しているに過ぎない。富裕層は実際に英国を離れてるわけではない。単に別の国で書類を取得しているだけで、必ずしも物理的に移住しているとは限らない」

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翻訳・編集=安藤清香

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